「すでに電話などで問い合わせしてきたお客様には、クーポンは使えますとご説明していたため、10日にいらっしゃるお客様にどう説明したらいいのかと、現場は大混乱でした。ギリギリで二次元コードが届いたので何とか解決しましたが…」(鈴木さん)
みなかみホテルジュラクの周辺の宿泊施設からも、負担増の嘆きが聞こえてくるという。高齢の従業員が多い旅館から、「電子クーポンのやり方が分からない。どうしたらいいのか」と相談が来たこともあった。
各地で宿泊施設やクーポンが使える店に二次元コードが届かなかったり、決済システムの不具合が発生したりと、混乱が生じている。北海道や青森県など急きょ、紙のクーポンも使用できる暫定措置を取った自治体が複数出ている。
混乱を避けるため、支援に参加しない判断をした企業もある。
星野リゾートは国内の7割の宿泊施設で、今回は不参加とした。
「旅行需要が落ち込む冬の時期の下支えになっている」(広報担当者)と支援自体は評価しつつ、すでに予約済みの客が多数いたことから、独自の支援策を打ち出す形を取った。
支援に参加しなかった別のホテルチェーンの担当者は、「前回の旅行支援の際、全国各地でルールが違うため、他の地域を旅行してから来られたお客様が、なぜこのホテルはルールが違うのかと怒ってしまったことがありました。チェックインもかなり待たせてしまうことが多く、トラブルになるくらいなら、支援に参加せず気持ちよく利用していただこうと考えました」と話す。
旅館やホテル業界は慢性的な人手不足の状態にある。コロナ禍でスタッフが離職した施設も多く、急に忙しくなったからといって、その穴は簡単に埋まらない。
旅行支援に救われる一方で、疲弊する現場。
宮城県ホテル旅館生活衛生同業組合が10月に行なった、県内の宿泊施設に対するアンケートでは、「(旅行支援で)負担が増えて離職者が出た」という施設が複数あったという。