手術の方法には、みぞおちからへその横あたりまでを縦に20~25センチほど切開する開腹手術、数カ所小さな穴をあけ腹腔鏡や手術器具を挿入する腹腔鏡手術があります。一部の病院では、腹腔鏡手術をさらに進化させたロボット手術もおこなわれています。

 手術では、胃の全部または一部を切除するとともに、周囲のリンパ節も一緒に切除します。そして、食道と残った胃や小腸をつないで食べ物の通り道を再建します。ステージによっては、再発予防のため術後に飲み薬や注射の抗がん剤による術後補助化学療法もおこなわれます。

■胃をすべて切除か、一部でも残せるか

 手術後は、胃の形や大きさが変わり、以前のようには食べられなくなり体重が減ります。減りが少なく早めにもとに戻る人もいる一方で、大幅に減少した状態が長引く人もいます。しかも、最初に減るのは筋肉で、活動性が低下し生活の質も落ちてしまいます。

 このような手術後の生活を考えると、胃をすべて切除(全摘)しないで一部でも胃を残したい、できるだけ全摘はしたくないと悩む人もいます。

 県立がんセンター新潟病院消化器外科部長の藪崎裕医師は、がんの広がりなどによって全摘せざるを得ない場合もあるとしたうえで、次のようにいいます。

「全摘といわれて疑問に思ったら、別の医師にセカンドピニオンを求め検討する方法もあります。また、術後は骨格筋量が大きく減少しないように効率よく栄養やエネルギーを摂取できる経口栄養剤を飲んでもらいますが、味に慣れるため手術前から飲むように指導しています。同時に筋力強化のための運動も動画で指導しています。もちろん退院後に継続することも大切です。現在、胃切除後障害で困っていたら、胃外科・術後障害研究会のホームページに対応施設の案内があるので参考にしてください」

 セカンドオピニオンを求めて受診してくる人について、和歌山県立医科大学病院消化器・内分泌・小児外科講師の尾島敏康医師は、こう話します。

「開腹手術を提案されたが、内視鏡治療でできないかなど、負担の少ない方法を求めて相談にくる人がよくいます。内視鏡治療の適応であったというケースもありますし、やはり手術が適応であっても開腹ではなく腹腔鏡手術もしくはロボット手術を提案したケースもあります」

 薬物療法は、遠くの臓器への転移があるなど手術で根治できない場合や、再発した場合に、がんを小さくすることで、できるだけよい状態で過ごせるようにするためにおこなわれます。最近は、効果のある薬が増え、人によっては、小さくなったがんをとる手術を受けるケース、手術しなくても治癒に近い状態を保てるケースも出てきました。

(文・山本七枝子)

 【取材した医師】
福島県立医科大学病院内視鏡診療部長 教授 引地拓人 医師
県立がんセンター新潟病院消化器外科部長 藪崎 裕 医師
和歌山県立医科大学病院消化器・内分泌・小児外科講師 尾島敏康 医師

福島県立医科大学病院内視鏡診療部長 教授 引地拓人 医師
福島県立医科大学病院内視鏡診療部長 教授 引地拓人 医師
県立がんセンター新潟病院消化器外科部長 藪崎 裕 医師
県立がんセンター新潟病院消化器外科部長 藪崎 裕 医師
和歌山県立医科大学病院消化器・内分泌・小児外科講師 尾島敏康医師
和歌山県立医科大学病院消化器・内分泌・小児外科講師 尾島敏康医師

「胃がん」についての詳しい治療法や医療機関の選び方、治療件数の多い医療機関のデータについては、2023年2月27日発売の週刊朝日ムック『手術数でわかる いい病院2023』をご覧ください。

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