1月18日から東京・銀座のシャネル・ネクサス・ホールで開催する写真展「A girl philosophy-ある少女の哲学」は、誰もが知る児童文学「不思議の国のアリス」「赤ずきん」「秘密の花園」などをモチーフとしている。
「どの物語を撮るかはひらめきで決めたんですが、もちろん、自分な好きな物語もあります。『青い鳥』はとてもいい。チルチルがかぶった帽子のダイヤを回すと、心の目で物が見えるから、本当の美しさが見える。作者のメーテルリンクはすごいな、って思いますね」
作品は、ある少女が目にし、心にとめた出来事について内省を深めていく過程を表現したという。
「ものの本質って何だろうと、少女が考察していく。少女の脳内みたいなものです。今の時代はすごく生きづらいじゃないですか。しかもコロナ禍で学校に行くことも、友だちに会うこともままならなかった。自由を束縛されるっていうか。そういう時間を過ごしてきた少女たちがこの世界をどう見ているのか」
安珠さんはロシア人の文豪ドストエフスキーの作品について触れた。代表作の一つ「地下室の手記」のなかで、元役人は「安っぽい幸福と高められた苦悩と、どちらがいいか?」と問う。
「これは私が大好きなセリフなんですけれど、その、高められた苦悩のなかでも希望を持てるのが少女の存在なんじゃないか、と思う」
■内省のはじまり
少女は勇気の象徴になり得るのではないか、と安珠さんは力を込めて語った。
「少女って、空想好きですよね。もちろん、少年も夢を見るけれど、少女の方がずっとリアリティーがある。恐怖に打ち勝つ力も少年よりも強いような気がする。だから、今回の作品では少女の強さというものをみなさんに再認識してもらえたら、という気持ちがあります」
女性の活躍によって社会が少しずつ変わっていく。そこに穏やかさも生まれてくるのではないか。
安珠さんは二十歳のころ、10歳の自分を振り返り、「あのころのほうがずっと大人っぽかった」と思った。
「幼いとき、世の中を手厳しく見ていた。物事を真っすぐに見ていたから。やっぱり、少女というものは硬くて頑固……」と口にすると、「うーん、言葉が難しいなあ(笑)」。
大丈夫、安珠さんが言いたいことは十分に伝わってきた。
(アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】安珠写真展「A girl philosophy-ある少女の哲学」
シャネル・ネクサス・ホール(東京・銀座) 1月18日~2月12日