上田とは鳥取刑務所で面会をしたことがある。事件については何一つ答えてくれることはなかった上田が、

「女性に生まれてよかったですか?」

 と聞いたときは、こう即答した。

「よかったです。女に生まれなきゃ、お母さんになれなかったから」

 誰からも良い話を聞かなかった上田だが、子どもに関しては皆口を揃え「子どものことは可愛がっていた」と断言していた。貧しいながらも、高校受験を控える長男には家庭教師をつけていた。上田なりに、子どもには未来への希望を見せたいと願っていたのだと思う。死刑囚になった後も、子どもたちには会えていたのだろうか。

 上田が私に見せてくれたのは、日本社会の残酷な一面だった。その残酷さは、この10年でより一層深まったのではないか。上田と同じような環境を生きている者たちに、牙を剥き、追いつめているのではないか。そんな重たい気持ちが深まっている。だからただ今は、痛みのない世界へ旅立った上田美由紀さんの安らかな眠りを祈りたいと思う。上田が見せてくれた残酷の正体を直視するためにも。

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