実際の話なのか定かではないが、バス強盗には無関心で、治安維持の役割を放棄した警察だが、国軍に抗議する市民がいるとすぐに動いたことに多くの市民が、「いまのミャンマーの警察ならやりそうなこと」と共感したという。
国軍は軍事政権を正当化するための総選挙を行おうとしている。1月9日から、選挙のための名簿づくりがはじまった。多くの市民がこの選挙に反対している。民主派の武装組織である国民防衛軍(PDF)は、名簿づくりを行う事務所への爆破攻撃をはじめている。
14日にはモン州で選挙名簿調査員4人が殺害された。同じ日にザガイン管区とマグウェイ管区では4人の調査員が国民防衛隊によって拘束されている。15日にはヤンゴンとマンダレーで調査員2人が殺害された。
さらに17日までにヤンゴンで2カ所、マンダレーで3カ所の選挙事務所が爆破されている。警備にあたる警察は、民主派の行動に目を光らせるが、街の治安には無関心だ。その状況下で2人の日本人は被害に遭った。
市民の不安はそれ以上に膨らんでいる。国軍は恩赦で釈放された人たちを手なずけ、「ピューソーティー」の増強を図っているらしい。ピューソーティーは国軍を支持する民兵組織だが、国軍が手を下したとわかると問題になるような、残忍な攻撃や略奪などを担うことでも知られている。
かつての軍事政権時代を知るヤンゴン在住のMさん(78)はこう話す。
「以前の軍事政権も、恩赦をつかって元犯罪者を暗躍させ、市民の不安をあおった。それと同じ手法です。国軍にとってミャンマーの治安など関心外。彼らは自分たちを守るために対抗勢力を潰すことだけに注力する組織ですから」
在ミャンマー日本大使館は16日、在住邦人に向けて以下の注意喚起の連絡を出していた。
「ヤンゴン市内では日夜を問わず路上強盗が発生しています。徒歩移動は窃盗犯や強盗犯に狙われる可能性が高くなるため、明るい時間帯でも徒歩移動は避け、短距離であっても移動は自家用車やタクシーなどを利用してください」
(下川裕治)