ニューヨーク在住の日本人経営者に聞くと、「こっちは日本より物価が2~3倍高いです。ラーメン1杯が税金とチップを合わせて25ドル(約3200円)します。それくらい物価が高いから稼がないと生活できない。年収900万円以下では低所得者に入りますよ」という。アメリカと日本ではいつのまにか、賃金格差が開いた。
「アメリカは毎年3%ずつぐらい賃金が上がっているのに対し、日本はほぼゼロですから、3%でも10年たてば30%以上の差がついてしまうので、どんどん差が広がっています。海外に対して水をあけられるということを、日本の経営者は感じているんだと思いますね」(同前)
この春、サントリーホールディングスがベアを含めて月収ベースで6%の賃上げ、日本生命が7%の賃上げ、ロート製薬も7%の賃上げを検討しているという。連合は「5%程度の賃上げ」を要求するが、経団連は上げ幅に関しては「慎重な検討が必要」と消極姿勢。岸田首相は5日、経団連などの経済3団体の新年祝賀会で「インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい」と要請した。岸田首相の要請に効果はあるのか。
「岸田政権が賃上げを要請し、そういう空気をつくったというのは評価に値するところだと思いますが、今グローバルに起きている日本と海外との賃金格差、人手不足というのは、政権がどうのこうのというのとは関係なく生じている。幸か不幸か、あんまり政治に頼らなくても賃金が上がりやすい状況になったのはいいことだと思います」(同前)
今後、賃金問題はどうなっていくのか。
「昨年、一昨年が賃金が全然上がらずひどかったので、その反動を含めると連合が掲げる『5%程度の賃上げ』は、今、物価が上昇していますから、妥当な水準だと思います。見方を変えればこれまでデフレで得をしてきたのは年金生活者で、損をしてきたのは現役世代。ところが、賃上げをすると、現役世代にとって、原資を確保するような形になりますので、これからは現役世代が少し有利な方向に所得の分配が進むのかなと考えています」(同前)
ユニクロが投げかけた「報酬改定」の余波は大きいようだ。(AERAdot.編集部 上田耕司)