
野村さんが南海の監督時代を振り返って、門田さんと江本さん、江夏さんの3人を「南海3悪人」と称していた。それについて門田さんは、
「僕は野球ばっかりで、野村さんとか他の選手とも飲みに行くこともないし、わが道を行くというタイプ。野村さんから何か指示があっても、納得しないと、『なんですかね』という顔をしていたからね。野村さんからすると扱いにくい選手だったのかな」
と、ビールを片手に笑っていた。
江本さんにも「南海3悪人」の話を聞いてみた。
「僕も3悪人の1人ですが、あれは野村さん一流の『こういうわがままそうな選手でも俺は操ってきた』という自慢にするたとえですよ。悪人は僕1人じゃないですか(笑)。確かに門田さんも偏屈、変わり者と言われてはいました。南海時代は毎晩、選手たちは酒盛りでしたが、今振り返っても、一回も門田さんと飲みに行った記憶はないですね」
そして、門田さんの打撃について、こう話した。
「今のホームランバッターは筋肉マンタイプが多いじゃないですか。門田さんは、太っていて独特の体の柔らかさとスイングの速さがホームランにつながっていった。野村さんが監督とキャッチャー、4番バッターの兼任ができたのも、門田さんというもう一人の主砲がいたからです。マウンドで投げていてもそのうち門田さんが打ってくれ、点が入るだろうと本当に任せられるそういうバッターでした」
江本さんも、ここ数年は、コロナ禍もあって疎遠になっていたという。
門田さんほどの実績があれば、コーチや監督もできたろうし、実際にいくつか依頼もあったようだが、持病の糖尿病や足が悪いこともあり、就任することはなかった。
10年ほど前に、奈良で偶然、門田さんに会ったことがある。
現役時代とはうってかわり、すっかりやせて小さくなってしまった印象だった。立ち話だったが、
「ビールばっかり飲んで、体を壊してしまった。飲み始めたら止まらない。あれっとテーブルをみたら、楽に10缶くらいあけてしまっていることもある。酒には気を付けないと」
と語っていた。
門田さんが指導者となれば、どんなチームができていたろうか。まだ74歳の死が残念でならない。合掌。
(AERA dot.編集部 今西憲之)