大阪公立大学病院耳鼻いんこう科部長の角南貴司子医師も、「難聴は認知症発症の最大リスク因子のひとつです。認知機能を低下させないためにも放置しないことが大切です」と説明します。
■補聴器の満足度は、価格ではなくフィッティングで決まる
補聴器の装用にあたって重要なことは、補聴器は眼鏡と異なり、「すぐに使いこなせるものではない」ということです。補聴器を装用しはじめた人の多くが最初に感じるのは「周囲の音のうるささ」です。それまで、難聴によって静かな世界に慣れていたため、「うるさくて耐えられない」と感じる人も少なくありません。
「うるさいからといって、やめてしまわないことが重要です。補聴器で聞こえを取り戻すためには、一人ひとりの聴力に合わせた専門家による適切な調整と補聴器での聞こえに脳を慣らすための一定期間の訓練が不可欠です」(柘植医師)
聞こえの悪さを感じたら、まずは日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が認定する補聴器相談医のいる耳鼻咽喉科を受診しましょう。そこで問診や聴力検査などを受けて加齢性難聴と診断されたら、「補聴器適合に関する診療情報提供書」を発行してもらい、それを補聴器専門外来、あるいは認定補聴器技能者のいる認定補聴器専門店に持参します。
そこで、聴力に合わせた適切な補聴器の調整、脳を補聴器による聞こえに慣らす訓練をおこないます。調整は補聴器をつけた状態での測定を繰り返して進めます。調整と訓練は一般的に2~3カ月を要しますが、若年者ほど比較的短期間で済む傾向があります。
「補聴器で聞こえが改善するか否かは調整次第であり、補聴器の満足度は、その価格ではなくフィッティングで決まります。さらに、適切な調整のためには補聴器をつけた状態での測定を繰り返すことも重要です」(同)
■補聴器で聞こえを補えない場合は、人工内耳も検討
補聴器の調整によっても聞こえの改善がおもわしくない場合は、さらなる再調整を重ねます。再調整でも聞こえが改善しない場合や高度・重度難聴では人工内耳を植え込む手術が検討されます。