■生活習慣の改善は、心機能の維持に不可欠
重症心不全では、日々の生活が心臓の状態を維持することに直結するため、生活習慣の改善が重要です。次のようなことを、医師や理学療法士、管理栄養士など、医療スタッフと連携しながら、実践していきます。
<運動療法>適度な運動で筋力を維持して体力を向上させることが、心臓の負担を減らすことにつながります。医師や理学療法士と相談のうえで運動強度や時間、回数などを決めて、無理せず続けます。
<活動の制限>過剰な活動は心臓に負担をかけます。安静にしすぎるのはいけませんが、できることを把握して、無理のない生活を送ります。
<食事>とくに気をつけたいのは塩分の摂取量。1日6g未満にします。バランスのよい食事を心がけます。食欲不振が続くときには必ず医師に相談しましょう。また、便秘は排便時にいきむことで心臓に負担をかけます。食物繊維を多くとる、発酵食品で腸内細菌叢を整えるなどで便秘を防ぎます。
<水分摂取>体内に水分がたまらないよう、必要以上に水分をとることは控えます。医師と相談して飲水の目安を決めておきましょう。
<入浴>入浴は血管を拡張させて心臓への負担を軽くしますが、長湯や熱いお湯、寒い時期の入浴は逆に心臓に負担をかけます。医師と相談のうえで入浴法を決めましょう。
<その他の自己管理>禁煙、節酒、かぜなどの感染症にかからないようにする、体重や血圧の把握などに努めます。
立川綜合病院循環器内科医長の布施公一医師は次のように話します。
「患者さんのなかには、薬物療法が非常に効果をあげる人や、CRT-Dの植え込みで心臓の状態がかなりよくなって、活動の制限が緩和される人もいます。少しでもよい状態を維持できるように、あきらめずに治療を続けてほしいと思います」
なお、日本心不全学会では心不全の患者を対象に「心不全手帳」を発行しています。地域や病院でそれぞれに、心不全の治療や生活のしかたについての冊子などをつくっているところもあります。参考にするといいでしょう。
(文・別所 文)
【取材した医師】
済生会熊本病院循環器内科部長 古山准二郎 医師
立川綜合病院循環器内科医長 布施公一 医師
「重症心不全」についての詳しい治療法や医療機関の選び方、治療件数の多い医療機関のデータについては、2023年2月27日発売の週刊朝日ムック『手術数でわかる いい病院2023』をご覧ください。