聞けば、入国管理局の管轄である収容所には、日本など海外への移送を待っている外国人が多くいるのだという。日本の感覚でいうと、「拘置所のような場所」とのこと。
生活の場は、コンクリートの床の大広間のような場所で、寝る時は床の上に薄いマットレスを敷き、外国人同士が雑魚寝する。食事はポリ袋に入ったカレーか野菜炒めにごはんという。
「虫がたくさんいて、あちこちかまれてかゆくて仕方がない。この中でも、暴行や窃盗など犯罪は日常茶飯事です。今、日本人が5、6人いますが、固まって他の収容者らと仲良くして事件に巻き込まれないようにしています。日本でも拘置所や刑務所に入った経験がありますが、“天国”に思えます。こっちではベッドで寝るにもカネを要求されますから」
収容所での様子をそう話すAさんの手には、フィリピンのガラケー(携帯電話)が握られていた。
「これがなきゃ、もう生きていけません。ここはカネ次第で何でもできるんです。携帯電話はフィリピン人の知人が差し入れてくれました。プリペイド式で、チャージする時はカード代金にいくらか上乗せした額を刑務官に渡せば、カードを売ってくれます。100ペソをチャージするなら130ペソくらいかな。30ペソ分が賄賂ですね」
日本では考えられないが、当たり前のことのようだった。さらに、食事なども驚くことが多い。
「食事は日本人同士が集まって、サバを焼いたり、肉じゃがを作ったりしています。今日の昼は、強盗で捕まった日本人が炊き込みご飯を炊いていました。材料は、フィリピン人の収容者が所内で開いている店に注文すればそろう。職員に頼むこともできる。3日前はハンバーガーを日本人のみんなでオーダーして買ってきてもらいました。外のフィリピン人の知人にカネを渡して、漬物やのりなどの日本の食材を買ってきてもらうこともあります」
面会している場所から施設の中が少し見えたので、Aさんに「中が見てみたい」と頼むと、
「職員の機嫌がよければちょっとくらいなら大丈夫だと思います。けど、何が起きるかわからないから職員にガードしてもらわないとダメです」という。