しかし、彼女とうまくいかずに別れ、地元に住み着いている日本人の男とつるんでいるうちに、振り込め詐欺などの犯罪に加担するようになったという。

 その後、日本に帰ることができたBさんに、渡辺容疑者らについて聞いた。

「渡辺(容疑者)のことは知ってますよ。収容所で少しの間、一緒でした。報道されている写真のように、当時からひげ面でこわもての顔つきでした。フィリピンでは、彼がやったオレオレ詐欺事件が報道されて、日本のシンジケートのボスだと紹介されていました。『シマダ』という偽名を使っていたはずです。かなり手広くやっていて、豪華なホテルに宿泊しながら犯行を重ねているところを捕まったとの話でした。渡辺は『国際手配までされて、やられちまった』などと話していたことがあります」

 Bさんはそう話した。収容所での生活について、

「渡辺は入ってきた時からカネは潤沢にあったようで、外からすしなどの日本食やファストフードを注文していました。スマートフォンも2、3台持っていて、部屋にはパソコンもある。収容所の中でも『日本とフィリピンを舞台に悪いことやっているらしい』とうわさになっていました。今回の報道を見て、やっぱりなと思いました。収容所では警察や入国管理局の調べもほとんどなく、何もすることがないんです。とにかく暇で仕方ないほどです」

 というのだ。

キャンプ内の様子(写真はいずれも10年以上前に撮影)

 警視庁は、事件に関与していたとされる日本人4人を早急に強制送還したい考えだ。

「4人はこれまで、闇バイトで実行役を募るなどして、名簿をもとに50件以上の強盗事件をしてきたのが明らかになってきた。さらに携帯電話の履歴などから、4人に加え日本にも指示役などの犯行グループがあることもわかった。ルフィと名乗る人物が複数いるかもしれず、稼ぎも数億円にのぼるとみられる。日本の暴力団とつながりがある可能性が高いこともわかってきた。早急にフィリピンから強制送還して取り調べたい」(捜査関係者)

 だが、フィリピン国内で事件を起こすなど法に触れることがあると、

「簡単に強制送還されません。フィリピン国内の事件の裁判があり、非常に複雑な手続きが必要で、時間がかかります」

 とBさんは話している。

(AERA dot.編集部 今西憲之)

[AERA最新号はこちら]