「ルフィ」を名乗り、一連の連続強盗事件で指示を出していたとみられる男ら4人が収容されているフィリピンの収容所。逮捕された容疑者らが収容されており、本来、自由がきかない場所のはずだが、ルフィはここから日本の強盗グループに連絡していたらしい。なぜそんなことができるのか? 記者は十数年前、別の事件の取材でこの収容所を訪れたが、およそ日本では考えられない独特の“システム”が存在していた。
警視庁が逮捕状を取ったのは渡辺優樹容疑者ら30~40代の男4人。マニラ郊外にあるビクタン収容所にいる。
記者は2007年と09年、詐欺容疑で逮捕されてこの収容所に拘束されていた日本人に取材しようと、面会しに行ったことがある。最初に訪れた時の驚きは今でも覚えている。
現地では、記者の取材を手伝ってくれるフィリピン人の男性がおり、収容所にも一緒に向かった。
受付の職員に取材相手の名前を告げ、面会できるか聞いてみたところ、
「家族や親戚じゃないと無理だ。その証明を日本大使館でもらってくる必要がある。もしくはフィリピンの弁護士と一緒に来てくれ」
と追い返されそうになった。
仕方ないので何か別の方法を考えようと立ち去ろうとした時、その職員は、同行していた男性に何やら耳打ちを始めた。話が終わると男性は私に、
「手数料を払えば、面会できるシステムがある」
というのだ。
本当にそういうシステムが存在しているのかはわからなかったが、
「領収書は出るのか」
と聞いてもらうと、「発行できる」という。
正確な額は覚えていないが、たしか500ペソ(1月31日現在、約1190円)くらいの金額だった。わざわざ日本から時間と旅費をかけて来ているのだし、従うことにした。
さっそく面会室に連れていってもらった。収容者と面会者を隔てるのは大枠の金網だけ。そこに、逮捕された日本人のAさん(当時は容疑者)がやってくると、
「よくこんなところまで来てくれましたね。地獄というのは、こういう場所のことを言うんですよ」
などと話し出した。