ここでも「どこにもぶつけられないSOS」と、SOSの出し方がわからないということを母親の困難としてサクラさん自身も捉えている(注2)。ここからあとで何度も母親の言葉が矛盾する場面が登場するが、言葉にできない状態やSOSを出せないこととリンクしている。
インタビューの前半では母親の自殺企図についての激しい描写が続くものの、サクラさんはあまり自分自身の思いについては口にしなかった。ここまでの引用では、母親の命にも関わるような大変な状況の描写が大部分を占めるなかで、「『死にたい人は勝手に死ぬ』って言っているんです」というような自分の不安を打ち消そうとする言葉づかいのなかに、間接的に母親への思いが表現されているだけである。
■感情の発見
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【サクラさん】何回も〔救急車を〕呼ぶようになってくると、あっちの質問が分かるので、「火事ですか、救急ですか」って言われる前に、「はい、消防です」って言われるときに、「救急車です、40代女性、意識はあります、息してます、眠剤を、何錠飲んでいます、ブラックリストに載っていて、病院が見つからないと思うので、探しながら来てください」って。
「娘が電話しています。お待ちしています、住所こうこうこうです。」「分かりました」ってすぐ来てくれるんですけど、大体、来てくれたら、第一声、「電話してくれた人、どこですか」ってまず言われるんですよ。そら、小学生がおるわけですから、「いや、私です」。「え、君じゃなくてお姉さん」って言われて、「いや、私しかいないです、この家」って言って、救急隊の人が「えー」ってなって。
それもやっぱり1カ月に4回、週1回呼んだときは、「またか」、救急隊の人がお父さんみたいになって、こんなへべれけなってるお母さんに「しっかりせえよ」とか言って、「何してんねん、娘に迷惑掛けて」とかって、意識ないんですけど、お母さんは。救急隊の人に「これ飲みました」って、薬の大体、薬飲んだやつ渡すんですけど、病院に行ったときに、「死ぬよ、こんなん」。
『死にたいんでしょ』って、私は心から『死ねばいい』と思っていたんで、『死ぬんやったら、死んでくれ』と。『私を解放してほしい』とずっと思っていたんですよ。『こんなにしんどいんやったら』って。
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