大阪・関西万博の会場となる大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)
大阪・関西万博の会場となる大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)

 2025年に開催される大阪・関西万博。そしてその跡地に予定しているカジノを含む統合型リゾート(IR)。現在、大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)で工事が進んでいるが、関係者にとってはちょっと頭の痛いことが起きているという。

【写真】長靴がずぼっと土の中に!

「雨あがりとはいえ、いきなりずぼっと長靴が沈んでいってヤバイと思いました」

 そう話すのは大阪市の職員だ。一緒に見せてくれたのは、長靴が土の中に埋まっている写真。

地盤が悪く、長靴が埋まった場所=大阪市此花区の万博予定地
地盤が悪く、長靴が埋まった場所=大阪市此花区の万博予定地

 この写真は、大阪・関西万博が開かれる大阪市此花区の夢洲の予定地だ。

 万博終了後は、約49ヘクタールの土地がIRへと変貌(へんぼう)する計画になっている。

 米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスなどの共同出資で大阪IR株式会社を設立して、大阪市や大阪府と基本協定を締結し、運営する。

 府や市は、2029年の秋から冬ごろに開業する段取りを描いている。すでに、土地所有者の大阪市は、大阪IRと協議し、土地改良費約790億円を負担することを決めている。

「私が歩いた場所はこれから掘削、整地、改良が行われるという場所で基本的に関係者以外は立ち入り禁止。想像以上に地盤は悪く、当初は790億円の改良工事で地盤沈下が収まるのか疑問に感じました」

 と前出の大阪市職員は話した。

 実際に夢洲の工事現場前に行くと、大きな重機のごう音が響き、トラックが頻繁に出入りしている様子が見える。

 フェンスの奥には雑草のはえた広大な土地があり、ダンプカーが行き来する。地下鉄・大阪メトロが延伸されて新駅がつくられ、万博やIRの中核と計画されている場所だ。

工事中の万博予定地。重機の大きな音が響いていた
工事中の万博予定地。重機の大きな音が響いていた

 夕方になり、現場から帰っていく作業員に聞いた。

 地下鉄関連工事に関わっているといい、

「工事がしにくい、やわらかい地盤であるのは間違いない。海の上の関西空港の工事をした経験もあるが、こちらの方がはるかに沈下しそうな印象」

「地中を掘るとけっこう水が出ますね。こういう地盤だと沈下は早い気がします」

 と教えてくれた。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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