■がれきの街、アンタキヤ
この地域の家の多くがコンクリートブロック製のため、倒壊したらその下敷きになり、人的被害がかなり増えているのでは、と語る。
「高層マンションが崩れて人々ががれきの中に生き埋めになっているようです」
小松さんの親族が暮らす街のなかで、もっとも被害が大きいと感じるのは冒頭に書いたアンタキヤだ。ハタイ県の県都アンタキヤは古い歴史を持つ商業都市で、人口が集中し、高層建築も多い。
「しかも、古いマンションがかなり建っていました。それが崩れて大きな被害が出ているようです。アンタキヤはレイハンルから車で1時間ほどですが、レイハンルの消防車や救急車のほとんどがアンタキヤに向かったと聞きました」
トルコの隣国シリアでも大きな被害が出ている。特にレイハンルやアンタキヤに近いイドリブ県や、“古都アレッポ”のあるアレッポ県ではたくさんの建物が倒壊している。
「夫は母国で子どものころに地震を経験していますが、これほど大きな地震に出合ったことはないとのことです」
6日午後にはM7.5の地震があり、現地では余震が続いている。震源の深さも10キロと比較的浅いところで起きているだけに、余震での被害も懸念される。
■日本でも起こるのか?
今回なぜ、この場所で地震が発生したのか、海洋研究開発機構の山本揚二朗副主任研究員は、次のように説明する。
「南側のアラビアプレートに対して、北側のアナトリアプレートが南西方向に動いた。この二つのプレート境界、東アナトリア断層で発生した地震だということは言えます」
トルコの国土はほぼアナトリアプレートの上に乗っており、その周囲にはアラビアプレートをはじめとする四つのプレートがある。
それぞれのプレートは年間数ミリから数センチの速度で移動している。固着したプレートの境界にはひずみがたまり、それが解放される際に地震が発生する。
そのため、トルコは日本と同様、地震が多い。なかでも地震の頻度が高いのは黒海に近い北アナトリア断層付近と、エーゲ海周辺、そして今回の東アナトリア断層付近だという。