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がんの3大治療として手術、放射線治療にならぶ薬物療法。その進歩は目覚ましく、近年新しい薬が登場し、劇的に変化している。今回は、胃がんの薬物療法の最新状況について、専門医を取材した。本記事は、2023年2月27日に発売予定の『手術数でわかる いい病院2023』で取材した医師の協力のもと作成し、お届けする。

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「進行がんの1次治療で勧められる薬が変わりました。十数年ぶりの更新になります」と話すのは、弘前大学病院腫瘍内科教授の佐藤温医師だ。

 わが国で1年間に胃がんと診断される人は12万~13万人。ヘリコバクター・ピロリ菌への感染がリスクファクターの一つとわかって以来、わが国では除菌が健康保険でおこなわれるようになった。そのため胃がんの罹患率や死亡率は減ってきている(年齢調整した場合)。

 とはいえ、日本では男性で3番目、女性では4番目に多いがんで、世界でも決して罹患者数は少なくない。このため、効く薬がないか臨床試験は世界レベルでずっとおこなわれてきたが、標準治療を超えるような有効性が示される薬はなかなか見つからなかったという。そのような状況下での標準治療の更新だ。

「1次治療で使えるようになったのは、免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブです。これまで3次治療でしか使えなかった薬でしたが、国際共同臨床試験などで生存期間の延長が証明されたことで、2021年から1次治療でも使えるようになりました。プラチナ製剤のオキサリプラチンとフッ化ピリミジン系抗がん薬と併用します」

 胃がんは内視鏡検査ががん検診で勧められるようになったことで、早期で見つかるケースが増えた。超早期であれば内視鏡治療ですみ、あとは経過観察になる。

 進行がんは低侵襲の腹腔鏡手術で切除するのが一般的になっていて、術後の病理検査によって追加治療が必要かどうか決まる。ステージIなら経過観察だけですみ、ステージIIの一部やIIIでは再発予防を目的とした術後補助化学療法がおこなわれる。

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全身療法で生存の延長とQOLの維持向上を狙う