また、ステージIVの転移がん、あるいは再発がんでは、全身療法で生存の延長とQOLの維持向上を狙う。
では、具体的な治療法をみていこう。
術後補助化学療法では、従来の経口抗がん薬のS‐1やカペシタビンを単独で使うが、オキサリプラチンやタキサン系のドセタキセルなどを併用することもある。
「オキサリプラチンを加えるかどうかは、進行度や年齢など患者さんの背景を考慮して決めます」(佐藤医師)
ステージIVや再発がんの1次治療では、HER2というたんぱくががん細胞に過剰に発現しているか否かで治療方針が変わる。基本は、カペシタビン+オキサリプラチン(CapeOX)、S‐1+オキサリプラチン(SOX)などの従来の抗がん薬の多剤併用療法で、HER2陽性胃がんでは分子標的薬のトラスツズマブを追加する。HER2陰性の胃がんでは、これまで併用する分子標的薬はなかったが、冒頭で紹介したとおり、これまで3次治療でしか使えなかったニボルマブが併用できるようになった。
HER2陽性の胃がんの全身療法ではもう一つ、新しい薬が登場している。分子標的薬と抗がん薬の合成薬トラスツズマブ デルクステカンだ。3次治療で使えるようになった。
ここへきてようやく薬物療法の幅が広がってきた胃がん。進行が早いスキルス胃がんを含めて、今、さまざまな臨床試験が進んでいる。
「まだこれまでの状況を大きく打開するような分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬はありませんが、ニボルマブやトラスツズマブ デルクステカンのほかにも、血管新生(がんが増殖するときに新しい血管を作る)を阻害するラムシルマブに従来の抗がん薬を組み合わせた治療などが承認されました」
と佐藤医師。ゲノム医療が進み、その情報が集積していくなか、今後、新たに使える薬や組み合わせは増えていくと期待する。
最後に、胃がんでは、手術で全摘したからだに抗がん剤を使うと副作用がキツくなるのではという心配もある。佐藤医師によると、今のところ胃を残した人と変わらないという報告と変わるという報告があり、一概に言えないという。