芦名さんが監督を務めるアニメ『夜は猫といっしょ』。登場猫の「キュルガ」の質感や動きがリアルで愛猫家の間でも話題に((C)キュルZ・KADOKAWA/夜は猫といっしょ)
芦名さんが監督を務めるアニメ『夜は猫といっしょ』。登場猫の「キュルガ」の質感や動きがリアルで愛猫家の間でも話題に((C)キュルZ・KADOKAWA/夜は猫といっしょ)

 もちろん、獣医師としての知識や経験がアニメの表現に役立つことも。主人公との「キュルガ」の生活を描いた人気アニメ『夜は猫といっしょ』はその最たる例だ。

「猫をアニメーターに描いてもらうと、どうしてもカートゥーンっぽく、動かしすぎてしまうんです。“猫はそんなに動かない! 尻尾もそんなに振らない!”とダメ出しすることも(笑)。人間やほかの動物を描くときもそうですが、体の構造や動き方を学ぶことはすごく大事。もちろん大げさに表現することもありますが、本来の動き方を知っているかどうかは大きな違いですから」

■「仕事の息抜きに仕事をしている」ことが楽しい

 以前から長時間労働や低賃金の問題が指摘されているアニメーション業界。芦名さんは若いスタッフの働き方の変化にも気をつけて対応しているという。

「2人で会社を立ち上げたときは、“締め切りに間に合わせるために寝ないでやるぞ”という状態でしたが(笑)、このご時世スタッフにそんなこと言えるはずがないし、させられない。働き方だけではなくて、ジェンダーの問題など、様々な価値観が大きく変わってきていることを感じます。中高年の経営者のなかには、内心“理解できない”と感じている人も多いと思いますが、結局のところ時代は若い人がつくっていくものだと僕は思ってるので、この流れを止めるべきではないと考えています。ただ別の視点で言うと、なんでもすぐにパワハラ認定されるようになったことによって、一部の不器用な若い人たちが成長する機会が失われているような気もします。自分で成長して結果を出していかなくてはいけないというのは、逆に厳しい時代だなと」

病院で動物たちを診療した後も『楽しい』と思うし、ひきこもってアニメを作っているときもやっぱり楽しい。仕事の息抜きに仕事をしている状態です(笑)」という芦名さん。最後に、ダブルワークを目指している人に対するアドバイスを聞くと、「“覚悟”でしょうね」という答えが。

「どちらの仕事にも全力を注ぎ込めるなら、やってみてもいいと思います。ただ、単純に体力も必要だし、ダブルワークをやるための条件を一言でいうなら“覚悟”なのかなと。あとは、二つ仕事があることを言い訳に使わないこと。僕も“アニメに集中すれば、もっと仕事ができるかも”“獣医師だけに絞ればもっと病院を大きくできる”と思うことがありますが、それをできないことの言い訳にしちゃうと何もできないです。前向きに“覚悟”を持って全部やればいいんです。で、疲れたら休めばいいんです(笑)」

(森 朋之)

あしな・みのる/1977年生まれ、兵庫県出身。獣医師、アニメの監督、脚本、演出家。自身が院長を務めるつくばみのぷう動物病院(茨城県つくば市)で獣医師として勤務すると同時に、アニメ制作ユニットのスタジオぷYUKAIを運営。手がけたアニメの主な作品は『異世界かるてっと』『夜は猫といっしょ』『ぷれぷれぷれあです』『でるた小劇場』『モビルスーツ学園「G-レコ甲子園」』『怪獣娘~ウルトラ怪獣擬人化計画~』など。2022年に『劇場版 異世界かるてっと~あなざーわーるど~』を劇場公開。現在、Blu-rayが好評発売中。

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