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日本気象協会の2023年 春の花粉飛散予測(第3報)によれば、スギ花粉の飛散量は九州~東北で前シーズンより多く、特に四国・近畿・東海・関東甲信で非常に多い予想。実際、鼻や目の症状に悩まされる人が増えています。歯周病専門医の若林健史歯科医師によれば、「花粉症のシーズンは、歯周病が悪化しやすくなるので注意が必要」とのこと。花粉症と歯周病がどう関係するのか、話を聞きました。

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 ついにやってきた2023年のスギ花粉症のシーズン、当院にも2月から、ズルズルと鼻水がつらそうな患者さんが増えています。

 先日も、30代の男性患者さんがハンカチで鼻を押さえながら定期検診にやってくるなり、カバンからティッシュケースを箱ごと出して、「ここに置かせてもらっていいですか?」とおっしゃいます。

「鼻水がひっきりなしに出て、ティッシュを大量に使うので。こちらのティッシュを使わせてもらうのは申し訳ないので持参しました」

 ということでした。

 その配慮に感心すると同時に、あらためて花粉症の患者さんの大変さを感じたのです。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 実はスギ花粉症の患者さんはシーズン中、歯周病も悪化するので注意が必要です。理由は口の乾燥です。鼻水や鼻づまりによって、口呼吸になり、口の中の唾液が少なくなるためです。

 唾液は耳下腺や顎下腺、舌下腺などの唾液腺のほか、舌や口蓋(こうがい)などの粘膜にある小唾液腺から分泌されます。通常、健康な成人は、1日あたり平均1.0~1.5リットル(大きなペットボトル1本くらい)もの唾液を分泌しているといわれます。

 唾液には食べかすやプラークを洗い流す自浄作用や、細菌の働きを抑える抗菌作用、ムチンという糖たんぱくによる粘膜の保護作用や潤滑作用、食べ物によって酸性に傾いた口の中を中和させ、溶けかかった歯を修復してむし歯を防ぐ「再石灰化作用」など、多くの働きがあります。

 花粉症で乾燥している患者さんの口の中は明らかにいつもと違います。プラークがベタベタと付着している上に、硬いのです。歯石も多く見られます。歯ぐきの色もみずみずしさが失われている様子がみてとれます。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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乾燥した口の中では、歯周病菌が増殖しやすい