日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「花粉症」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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2月10日、東京都は都内でスギ花粉の飛散が確認されたことを発表しました。昨年よりも5日早い飛散開始であり、過去10年の平均飛散開始日よりも5日早かったといいます。恐ろしいことに、今年の春に都内においてスギやヒノキの花粉が飛散すると予測されている量は昨年の2.7倍となることが見込まれています。そうなれば、過去10年間において2番目に多い飛散量を記録することになるほどの多さだといいます。
例年、1月中旬から下旬にかけて「目がしょぼしょぼしてきました」「鼻がむずむずし始めた気がする……」と花粉症の症状を訴える方がお越しになります。「そろそろ今年も花粉がやってきそうなので、早めに受診しました。」と今シーズン分の薬の処方を希望して受診される方もいます。実は、花粉が本格的に飛散し始める2週間ほど前から抗アレルギー薬の内服を始める初期治療が花粉症に有効だと言われています。ずっと花粉症に悩まされている方の場合、「昨年にもらっていた花粉症の薬が残っていたので、花粉の飛散が始まる少し前から飲んでいたが、それも無くなってしまった」とおっしゃるケースも少なくありません。
私もまさに今、花粉症の症状に悩まされている一人です。15年ぶりに花粉症を再発し、花粉症の辛さを身にしみて感じている今日この頃。今回は、日本の国民病といっても過言ではない花粉症について述べたいと思います。
「花粉症環境保健マニュアル2022」に引用された全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした鼻アレルギーの全国調査によると、2019年の花粉症の有病率は42.5%であったといいます。1998年と2008年に実施された同様の調査で1998年の花粉症の有病率は19.6%, 2008年は29.8%であったことから、花粉症の有病率は増加傾向を認めていることがわかります。