質問した就活生たちは一応、納得顔で僕の話を聞いてくれます。しかし、いざこの質問に答えようとすると、すぐに困惑した表情を浮かべる……というのが、いつものおおよそのパターンです。
それもそのはず、この問いは、どんな大人もなかなか答えられない難問。じつは僕自身、どうなっていればゴールにたどり着いたと言えるのか、いまだに暗中模索の状態です。
もちろん、意地悪がしたくて、そう問いかけているのではありません。どういう状態がゴールなのか、本当は誰にも明確には答えられないだろうとわかったうえで、あえて問いかけているのです。
それは、たとえ遠回りに思えても、就活ではまず、「自分の人生において、どういうふうに仕事と向き合っていきたいか」という自分なりの考え ――最初はぼんやりとしたイメージでもかまいません―― をもったうえで、それに照らし合わせて就職先を選ぶこと以外に、真に「就活の不安」に打ち克つ方法はないということを、自分が就活生だった頃の経験もふまえて痛感しているからです。
■サービスが行き届いているがゆえに陥りやすいワナ
ところが、それが「理想」とわかっていても、現在の日本では、あまりにも「就活の仕組み」が整っているために、そういう問いに立ち向かうことなく就職できてしまいます。
一言で言えば、就活生に向けた企業側のサービスが充実しているということです。
まず、リクナビやマイナビなどといったポータルサイトがあり、複数の企業情報を一気に閲覧し、ボタン一つで簡単にエントリーできます。
そしてエントリーすると、応募した企業から適当なタイミングで次のステップへの案内が入り、リクルーター(就活をサポートする社員)が選考に伴走してくれ、めでたく内定までこぎつければ、あとは卒業を待つのみ。
就職説明会や面接の時期もある程度決まっているため、自分から積極的に情報を取りにいかなくても、就活を進められます。つまり、流れに乗って動いていれば、なにがしかの企業からのオファーをもらえるような仕組みができあがっていると言えます。