
小中高と大分の公立校で学び、米・ハーバード大学、ジュリアード音楽院を卒業・修了したバイオリニストの廣津留すみれさん(29)。その活動は音楽だけにとどまらず、大学の教壇に立ったり、情報番組のコメンテーターを務めたりと、幅広い。「才女」のひと言では片付けられない廣津留さんに、教育やキャリアのことなど、さまざまな悩みや疑問を投げかけていくAERA dot.連載。今回は、日本政府の「教育未来創造会議」の委員も務める廣津留さんに、日本の教育で変えたいところ、逆に変わってほしくない良いところを聞いてみた。
【写真】ソリストとして学生オケと共演するハーバード時代の廣津留さん
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Q. 日本の教育でここを変えたらいいのにと思うのはどんなところですか?
A. そうですね……、「グローバル」という言葉をむやみに使うのはちょっと違和感があるかなと。「グローバル人材を育てる」とかよく言われますけど、たとえばいま世界で活躍しているメジャーリーガーの大谷翔平選手や指揮者の小澤征爾さんも「グローバル人材」になろうと思って世界レベルにまで達したわけではないですよね。ただやりたいことを情熱を持って続けてきた結果であって、そういう風に自発的に情熱を持てるように背中を押すことこそが教育なんじゃないかなって思うんです。
学校教育について言えば、例えば読解の問題などで、AかBかの正解を求めるのはちょっと古い気がするんです。理論的には正しいことを書いていても、言い回しが教科書の書き方とは違うからバツがつくなんてことは、なんだか理不尽……! 0か100かではなくて、どうしてこうなったかを考えていくことが大事なはずなのに。これがけっこう子どもなりにダメージが大きくて、トラウマになって自分が言いたいことも言えなくなってしまうこともあります。理不尽に「ダメ」「間違い」と言われる経験が重なっていくと、大人の許可や確認を得ないと自分の考えや意見を言えなくなって、自分がやりたいことも人に伝えられなくなってしまいます。学校だけじゃなくて家庭でも、子どもたちが自由に意見を言える雰囲気をまわりの大人たちが作ることが大事なのでは。大谷選手だって「二刀流なんて前例がないからダメだ」なんてまわりの大人から言われ続けていたら、やっていなかったかもしれません。子どもたちが自発的にやりたいことに対して、背中を押していく環境づくりをしていけば、自ずと世界で活躍する人材が生まれていくんじゃないかなと思います。