それを可能にしているのが、大規模言語モデルと呼ばれる、膨大な情報を読み込んだAIの仕組みだ。オープンAIが2020年に公開した「GPT-3」というモデルは、書籍や論文、記事、ウェブサイトなど570ギガバイト(半角英数字で5700億字分)のデータで学習し、AIの性能を示すパラメータ数は1750億に上る。「チャットGPT」で使われているのは、その改良型の「GPT-3.5」だ。
昨年11月30日のサービス公開から5日でユーザー数は100万人を突破。ロイター通信によれば、今年1月の月間ユーザー数は1億人に達した。1億ユーザーに到達するまでに、ティックトックは約9カ月、インスタグラムは2年半かかっている。
その性能を物語る、様々な論文も発表されている。
米カリフォルニア州の医療機関などのチームが、「チャットGPT」に米国医師資格試験(USMLE)への解答をさせたところ、合格圏とされる60%以上の正答率をほぼクリアできたという。
また、米イリノイ工科大学ロースクールの教授らが「チャットGPT」に米司法試験の全州共通択一試験(MBE)に回答させたところ、正答率は7科目平均で50%。受験生の平均正答率68%には及ばなかったものの、2科目(証拠法、不法行為法)では合格者平均を上回ったという。
知識だけではない。米スタンフォード大学の准教授が実施した、他者の心をどれだけ推定できるかを測る「心の理論」のテストでも、「チャットGPT」は9歳の子どもと同レベルの結果を出したという。
●熾烈な「軍拡競争」
「チャットGPT」の成功が台風の目となり、IT大手は熾烈な「軍拡競争」を展開する。
すでにオープンAIに投資していたマイクロソフトは1月23日、「チャットGPT」の成功を受けて数十億ドル規模の追加投資を発表。2週間後の2月7日には、「チャットGPT」より高性能な「次世代GPT」を、同社の検索サービス「ビング(Bing)」のチャット機能として組み込んだことを発表している。
グーグルは「チャットGPT」の登場に警戒感を強め、社内に「コードレッド(警戒警報)」を発令したと報じられた。同社の屋台骨である検索サービスとネット広告収入を揺るがしかねないためだ。グーグルもマイクロソフトの発表前日となる2月6日、自社の対話型の生成AI「バード(Bard)」を発表している。