「夢」から着想、「シャワータイム」にアイデアがジャンプアップ

 ところが肝心の不可解な事件が、まったく思い浮かばない。そこであれこれと悩んだ末に、気球自体が人間の首を吊りに襲ってきたら面白いのではないか、と考えついた。

 それも黒い気球が1個ではなく、編隊を組んで襲ってくるのだ。

 しかしそれでも、まだ弱い。絵にしてもあまり面白味がないし、ストーリーも膨らませづらいなあと、なおも悩んでいた。

 そして考え疲れて、シャワーを浴びていたときに、ふと、いっそのこと気球を人間の顔にしたらどうかと思いついた。気球はドッペルゲンガーのような存在で、同じ顔をした人間の首を吊ろうと襲ってくるのだ。これなら絵的にもただの丸い気球より面白いし、気球が襲ってくる必然性も生まれる。

 ああ、それだ。私は喜び勇んで風呂から上がると、一気にストーリーをまとめ、興奮のうちに原稿を書き始めたのであった。

こんなアイデア、いったいどうやったら生まれるのだろう? (伊藤先生のアイデアノートより)
こんなアイデア、いったいどうやったら生まれるのだろう? (伊藤先生のアイデアノートより)

細部の設定をおろそかにしない

 この作品については、設定の細部にまでかなり気を配った。

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