ジョブ型雇用を機能させるには企業・産業間で人材が円滑に移動できなければならない。
「今、岸田政権は労働市場の流動化に力を入れています。リスキリング(新たなスキルを身につけること)をして成長する分野やよりよい企業に移動(転職)してくださいと、堂々と呼びかけている。これは画期的なことです」
しかし1月の国会答弁で、岸田首相が産休・育休期間中の女性に対してリスキリングを支援する考えを示すと「子育ての大変さがわかっていない」と、批判を浴びた。
「育休というのは赤ちゃんを育てる重労働の時間ですから、それをわかっていない能天気な発言だとして批判されたわけです。そのお気持ち自体は私も完全に共有します。育休中に仕事の方が楽だと思ったことも多々ありましたから。ただ、あの発言は、リスキリングをしなさいと、強制したわけではないのですね。リスキリングの機会はすべての人に開けています。それ以上でも、それ以下でもない。育休中であっても、リスキリングをしたいという気持ちがあり、それができる環境があれば、やりたい人はやってもいいではないですか。批判が行き過ぎて、逆に、育休中にリスキリングをする人が非難されるようになってもいけないなと」
生涯未婚率の急上昇
労働市場の流動性が低い日本の雇用環境では仕事を離れてまとまった時間を確保することは難しい。
「そうすると、1年くらい会社から離れられるのは育休中くらいしかないわけです。私の場合、第1子を出産したとき、1年半、産休と育休をとりました。最初の3カ月は、自分の体はボロボロだし、赤ちゃんは夜泣くし、おっぱいもなかなか吸ってくれない。もう、大変です。でも、8カ月くらいになると、結構よく寝てくれるし、安定してきた。そのときに金融の勉強をしました。今でも、それはとてもよい時間の使い方であったと思います。でも、育休期間が短かったり、手のかかる赤ちゃんだったり、家庭のサポートがなかったりすれば、リスキリングなど考える余地もないことでしょう。結局、育休期間の長さ、赤ちゃんの状態や家庭のサポートのありようなど、人によって状況はまったく異なるのです。個々の人に対して、社会が一律のものの見方をしない押し付けないことが大切だと思います。とはいえ、より重要なのは、日本型雇用を見直して労働市場を流動化していくことです。それは、女性や若者の活躍にも直結し、社会が活力を取り戻すことにつながると考えます」