産後パパ育休の取得者増加が、なぜ少子化対策となるのか?
「日本では家事育児にかける時間が女性と男性では非常に不均衡で、5.5倍(20年)も違います。すると、妻は忙しすぎて、もう子どもを持つ喜びは1人だけでいいやってことになりがちです。実際に私がそうでしたから。子どもが2人いるんですけれど、また私が全部抱えるのは嫌だと思って、第2子を産むことには相当躊躇(ちゅうちょ)しました。ちゃんと家事育児を分担することを夫に確約してもらって、それで産むことにしました」
松川局長は続ける。
「第1子が生まれたときに、家族のかたちは変わります。赤ちゃんのおしめを替えたり、入浴させたりするわけです。そのときに、以前と同じように家事を全部、妻がやっていたら、その後もそのままです。そうではなくて、3週間、2週間でもいいから夫が一緒にやれば、家事育児の分担がよりフェアになる習慣がその家庭にできます。それは男性の産後育休が事実上義務化されているフランスでも実証されています。『男性産休』だけが理由ではないでしょうが、フランスでは出生率が回復しました」
リスキリング答弁は?
女性が育児休業を取得しても、それがキャリアブランクにならない仕組みを整えていくことも重要だという。
「女性の場合、授乳とか、いろいろあって、育休が男性よりも長いわけです。その期間がキャリアブランクになってしまうと、損をした気持ちになる。同期はみんな出世していくのに、なんで私だけ、って。1年だけならともかく、もう1回、育休をとったら、またみんなから遅れてしまう、と思ってしまう。キャリア上の不利益は、子どもを産むことをためらう大きな理由になっています」
一方、海外で主流の「ジョブ型雇用」ではこのような問題はあまり起こらない。
「ジョブ型では勤続年数で給料が決まるわけではなく、その人の能力に対して給料が支払われる。なので、育休をとるたびに出世が遅れる、ということは少ない。転職も当たりまえですから。子どもを増やすためには、そういう働き方の構造的な課題にも取り組まなければなりません」