現在の日本の新作アニメ制作は、製作委員会方式が主流だ。映像ソフトメーカー、放送局、玩具会社、ゲーム会社、広告会社などの企業が出資し、深夜の地上波テレビ放送などの枠をスポンサー料を支払い確保、実際の収入はテレビ放送ではなく放送後に発売される映像ソフトやイベント、グッズなどの二次展開で得るといった方式だ。

 そのため二次展開に向かない企画は通りづらい傾向があり、また通ったとしても「玩具として発売できるように」「放送コードにひっかからないように」などの条件が多く、制作には針の穴に糸を通すような困難が伴うという。関係者が多いため意思決定のプロセスに時間がかかる弊害も言われていた。

■製作委員会は限界か

 その点、1社で意思決定が完結するネットフリックスは、作品制作のスピード感、クリエイターとのコミュニケーション密度の高さにおいて、大きなメリットがある。これも現代のヒットにつながる重要なスキームだ。

 プロダクション・アイジーの石川光久社長(61)は「配信で稼げるようになるのはこれから」と前置きした上で、

「いまのビジネスモデルのままでは難しいのも確か。ネットフリックス登場のよい影響として、アンフェアな配分をするような製作委員会は生き残れなくなってきた。日本での配信は地上波に比べてまだ小さい。でも配信は間違いなく世界を巻き込んでいる。海外の大きなプラットフォームが再びチャンスをくれた」

 と話す。前出のネットフリックス・櫻井さんも、こう話す。

「いままでは、発注側に現場のことを知らないプロデューサーが多い印象でした。いい脚本があればいい作品になるとも限らない。軍隊でいえば脚本は作戦のようなもので、実際に戦うのは兵士。そのことがわかる人が作戦を立案する側にいなかったという現状があった」

 ネットフリックスという“黒船”来航で、ヒットを生み出す方程式は変わりつつある。(編集部・小柳暁子)

AERA 2020年3月16日号より抜粋

※AERA 2020年3月16日号では、「ヒットの方程式」を全10ページで特集。動画配信の巨人「Netflix」のクリエイティブを統括するディレクターら“中の人”も徹底取材しました。

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