
――実験はチームでやるんですよね。人集めには苦労しないんですか?
苦労してます、苦労してます。プロジェクトが大きくなって大きな船になると、人は集まってくるんですけれど、うまくいくかどうかわからないプロジェクトにはなかなか集まってこない。規模が大きいので、いくつかの研究室が集まらないとできないんですが、まだ集められていない。
――大変さはそういうところにもあるわけですね。
そうですね。ただ、この業界、つまり素粒子実験をやる人たちは必ず多人数の共同研究をするので、互いに助け合う風土みたいなものがある。私は周りにいた研究者から裏で相当サポートしてもらいました。その人たちの影響を受けて、いろんな仕事を引き受けてもきました。
日本では、この業界に女性が少ないですけれど、世界ではもう半分ぐらい女性じゃないかな。日本中にうちの旦那さんみたいな男の人が増えればいいと思います。
市川温子(いちかわ・あつこ)/1970年、愛知県一宮市生まれ。京都大学大学院理学研究科物理学専攻博士課程修了、理学博士(京都大学)。高エネルギー加速器研究機構助手、京都大学准教授を経て2020年から東北大学教授。専門は素粒子実験。世界から500人以上が参加する大型国際実験プロジェクトT2K実験の代表を2019年から務める。優れた女性研究者をたたえる「猿橋賞」を2020年に受賞。