横浜市は「保育・教育コンシェルジュ」が個別の相談に応じている。女性は申し込み時に2人同園を希望したが、「同時同園は現状厳しいから、受かる確率が高くなるように別々にしたほうがいい」とアドバイスを受け、その通りにした結果、非現実的な組み合わせの2園に。再び相談すると「最初から同園で申し込めばよかったんじゃないですか」と言われる始末。
「相談する人によって、言ってることが違うんです。話すだけ無駄だと思いました」
と憤る。市から2次募集の申し込みを勧められたが、希望園の枠は残されていなかった。
結局女性は、承諾された2園を辞退し、今の仕事を諦めるという決断をした。上の子は家から近い幼稚園に通わせ、下の子は家で過ごす。私立幼稚園は高額で、入園金や設備費などでまず約20万円の出費がある。住宅ローンも始まったばかり。
「働けないうえにこんなにお金がかかるなんて……」
承諾通知が来たにもかかわらず、辞退した場合は自己都合と判断され「待機児童」にはカウントされない。横浜市ではこうした児童を「保留児童」と呼ぶ。だが実態は待機児童と変わらない。横浜市の担当者は言う。
「入れないエリアがある一方で、0、1、2歳児でも定員割れになる園もあります。今後もマッチングを続けていければ」
埼玉県川口市に住む女性(39)の場合、保活で見学したのは20園。距離や施設設備などを考えて1次選考の希望欄には滑り止めと思って記入した新設園を含む10園を書いた。結果、入れたのは第8希望の新設園。
「20件も見学したのに、決まったのは見たことのない新設園。見学の苦労がムダになった気がします。新設だと、園長先生の顔すら知りません。過ごしている子どもの様子を見て、入る園は決めたかったのですが、入れただけでもマシだと思うしかないのでしょうか」
(フリーランス記者・宮本さおり、大楽眞衣子)
※AERA 2020年3月2日号より抜粋