AERA 2020年2月22日売り表紙に中谷美紀さんが登場
AERA 2020年2月22日売り表紙に中谷美紀さんが登場
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 Netflixオリジナルシリーズ「FOLLOWERS」の公開を控えた中谷美紀さんがAERAに登場。演じることは常に「スクラップ・アンド・ビルド」だと言う中谷さんが、俳優という仕事について語った。

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 憧れとは違う、決して忘れられない映画のヒロインに出会ったことはあるだろうか。「嫌われ松子の一生」で中谷美紀演じた松子がそれだった。ひょんなことから坂を転げ落ちるように“地獄”へ堕ちていく。そんな松子に泣いた。感情に任せて突っ走る。つい愚かなことをしてしまう。欠点だらけでダメな松子は、まさに自分自身だった。

 最新作「FOLLOWERS」で演じたリミは、社会的成功を手にした第一線で活躍する写真家。きらびやかな生活がリアルに感じられなくても、リミが仕事と育児に翻弄(ほんろう)される姿には、胸を突かれる。

 一見自分とは似つかないヒロインでも、中谷が演じると共鳴できる。彼女が演技をする上で大切にしていることは「媒介に徹すること」だと言う。

「俳優は自分の主義主張を表現するのではありません。あくまで脚本や原作、または監督の思いを伝える媒介者です。ですから、いかにその行間を読み取れるか。あとは、相手の役者さんとの呼吸を大切にしています」

 かつては「女優は年を重ねると仕事がない」と聞いたものだ。だが、人生100年時代と言われる今、キャリアを否定するような声は少ない。中谷も言う。

「例えば、シャーロット・ランプリングが演じた『まぼろし』ですとか、年齢を重ねてこそ表現できる役柄がある。『男と女 人生最良の日々』ではアヌーク・エーメが老いてこそ、かつての恋人との親密な空気を醸し出していました。むしろ、シワが語ってくれるといいますか。年齢を重ねるからこそものを言わずして、そこに佇(たたず)まうだけで表現できることが増えてくると思います。今は、自分自身が年齢を重ねることが楽しみになりました」

 真っすぐな視線。丁寧な言葉遣い。凛とした佇まいは一朝一夕には生まれない。(フリーランス記者・坂口さゆり)

AERA 2020年3月2日号

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