
映画「パラサイト半地下の家族」が非英語映画として初めてアカデミー賞作品賞を受賞。30年以上アカデミー賞を見続けたMs.メラニーが、この歴史的快挙の意義を読み解く。AERA 2020年2月24日号の記事を紹介する。
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何という結果でしょう。非英語映画が初めて、アカデミー賞作品賞を受賞しました。しかもアジア映画。すごい快挙です。“オスカーウォッチャー”を名乗る私は、趣味で30年間オスカーを見続け、毎年受賞予想をしています。今年は24部門中17部門の的中。一番の大勝負は作品賞を自分の願いも込めて「パラサイト」にしたことでした。
映画「パラサイト」はスタートから異例でした。韓国映画史上初めてカンヌでパルムドールを取り、大絶賛のうちにアメリカで公開、現在の興行収入は3500万ドルを超えます。監督のポン・ジュノ(50)は、「殺人の追憶」(2003年)、「グエムル漢江の怪物」(06年)とヒットを連発し、09年には「母なる証明」でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品。母親の底知れない、狂気にも取れる深い愛情を描く強烈な作品で、世界中に熱烈なファンを生みました。そして「パラサイト」は今回のアカデミー賞で作品賞を含む6部門にノミネート。その中の4部門を受賞しました。
非英語映画がアカデミー作品賞を取る日は遠くないかもしれない、と初めて思ったのは昨年でした。アルフォンソ・キュアロン監督の「ROMA/ローマ」がヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞と、アカデミー賞の前哨戦である全米監督協会賞を取るなど、アカデミー作品賞のフロントランナーに躍り出たのです。しかし受賞には至りませんでした。
それではなぜ「パラサイト」は取れたのか。
理由はいくつかあると思います。「ROMA」はモノクロで、見た目からして人を選ぶこと。内容もごくパーソナルなドラマです。ネットフリックス制作で劇場公開の機会が限られ、興行的な「ヒット感」も出せませんでした。しかし最も大きな理由は、率直に「パラサイト」の方が人々の心を動かし、熱烈な支持を得たのだと思います。