「申請用の診断書を主治医に書いてもらうことが大変でした。実は、医者も障害年金のことはわからない場合は少なくない。『がんには適用しない』と一蹴される患者もいるようです」

 関さんは“先輩”から、障害年金は公的な文書で、書き方が不十分だと差し戻しされると聞いていた。そこで、医師には障害年金の仕組みや必要な理由、仲間で申請している人がいる事例を丁寧に説明した。

 訪問看護師で、「がんと暮らしを考える会」理事長の賢見卓也さんによれば、障害年金は、そもそも「申請主義」であり、多くの患者がその存在を知らない上、複雑な制度設計による「書類の山」の壁に阻まれ、アクセスしづらいという。初診日を証明するため、最初にかかった病院から診断書をもらうのに苦労する人もいる。

 がんになってもお金に困らないための備えは、がん治療の段階によって、受け取れる保険給付金や年金などいくつもある。だが、知らなければ、得られるはずのサポートが受けられない。

 賢見さんは、「知る」ことで民間サービスも有効に活用できるという。以前、生活保護目前の独居女性が、費用負担を気にして医療的ケアを拒みがちなケースがあった。女性は終末期で、一人暮らしが困難な時期に差しかかっていた。女性が入る保険の担当者に相談し、女性は保険の「リビングニーズ特約」を使って、医療的ケアや入院、介助の費用に充て、生活が継続できた。

「がんは治療も高額化してきた。経済的負担を減らすため、『使える社会資源』を探してみることも必要です」(賢見さん)

(ノンフィクションライター・古川雅子)

AERA 2020年2月10日号より抜粋

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