「インクルーシブ公園は、スペシャルニーズのある子たちが日常的に遊べる身近な場所にこそ必要。地元の子どもたちと交じり合って遊び育っていく中で、インクルーシブ社会の基礎ができるはず。公園でどんな子どもも一緒に遊んでいる姿が当たり前の光景になったらいい」
都も参考にしたガイドブック『すべての子どもに遊びを』の編著者のひとり、「みーんなの公園プロジェクト」の矢藤洋子さんは、インクルーシブな遊び場をつくる意義をこう説明する。
「遊びは子ども自身の力を引き出し、人生の可能性を広げてくれる重要なもの。工夫さえすれば誰もあきらめることなく、一緒に遊ぶことができるのです」
砧公園の改修費は通常に比べるとやや割高だ。菅原課長によると、費用がかかったのは主に舗装で、遊具自体は、インクルーシブでもそうでなくても大差はないという。
こうした都の動きは市区町村にも波及し始めている。豊島区では昨年8月、区内で活動する障害者の親たちなど5団体が区にインクルーシブ公園の設置を求める要望書を提出したことを受け、今年の7月に新設する公園にインクルーシブな遊具が導入されることになった。区の公園計画特命担当課長の小堤正己さんは言う。
「バリアフリーの視点を超える、誰もが楽しめる、という視点を教えてもらった。予算も限られるので一度に完全に整備できるわけではないが、遊具の改修や公園の新設の際などに徐々に進めていきたい」
都はこれまで得たノウハウを関心のある自治体に提供しようと、今後ガイドラインも作成するという。前出の矢藤さんはこう話す。
「作る人と使う人が対話を積み重ねていくことで、より豊かな場所を作ることができる。互いに声を伝え合い、次の公園づくりに生かしていくことが大事です」
(編集部・深澤友紀)
※AERA 2020年1月27日号より抜粋