国民の反応はと言えば、夫妻の「セミリタイア」を支持する声も多いという。アフリカ系アメリカ人である妃への差別的記事があり、それでも負けない妃の強さも報じられていた。同情と共感があるからの賛成で、「公務を減らしても暮らしはそのまま、結局いいとこ取りでは」と思われれば、元も子もない。

 女王の考えは明らかにされたが、ウィリアム王子(37)の思いは伝わってこない。彼だって「若い家族として新しい人生を築きたい」と思ったことがあるはずだ。「革新的で新たな役割」を模索できるものならしたいだろう。だが、たぶん彼は生涯、そういうことは口にしないのではないか。英王室のことは詳しくないが、長男と次男は違うだろうと思うのだ。ハリー王子の気楽さ。気楽が言い過ぎなら、自由さ。いずれにせよ、次男だからこそ。そう思ってしまう。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2020年1月27日号より抜粋

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