AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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ニュージーランドで多くのコメディー映画を手掛け、脚光を浴びたタイカ・ワイティティ監督。その才能で「マイティ・ソー バトルロイヤル」の監督に抜擢されたのを機に、ハリウッド売れっ子監督の仲間入りをした。新作はニュージーランドの作家による小説『Caging Skies』を映画化した、「ジョジョ・ラビット」だ。
「僕は10代の頃、ボスニア紛争をテレビで見て衝撃をうけ、尽きない興味がわいた。成人して更に多くの戦争についての本を読むようになり、この原作と出合った」
そしてこの原作に惹かれた監督は、映画化を考えた。
「いま大人として、多くの子どもたちが残虐な戦争を目撃し、巻き込まれてしまう現実を知ってほしかった。子どもは大人を、賢く尊敬すべきお手本として育てられる。ところが戦争が勃発すると、その公式は一気に消滅する。子どもの目を通し、大人の愚行を描きたかったんだよ」
時は第2次大戦中のドイツ。10歳のジョジョは青少年予備隊で訓練を受けている。ウサギも殺せない臆病者でジョジョ・ラビットというあだ名を頂戴してしまうのだ。
彼を慰める話し相手は空想の親友、監督自身が演じるアドルフだ。そんなある日、母が屋根裏部屋でかくまうユダヤ人の少女を発見してしまう……。
「アドルフは10歳のジョジョの空想、彼の大人版だよ。大人の体をした10歳の少年。それは、ほぼ僕自身だけれど」と笑う。マオリ族とユダヤ人の血をひくワイティティ監督。それがこのテーマに強く惹かれた要因だったのか。
「僕の映画はすべて個人的な思い入れがある。母の家族はロシアからイギリスへ逃亡し、ニュージーランドに落ち着いた。僕の血には強固な抵抗力と生存力、ユーモアが流れているんだ。マオリとユダヤ、二つの全く異なる文化に共通する同様のユーモアだよ」