この点について、伊藤さんの会見にも同席した、伊藤さんの顧問弁護を務める村田智子弁護士は、こう答えた。

「私たちは弁護士として、いまできることをやった。逮捕状が執行されなかったことについて国を訴えるのは難しい」

 2人の会見を聞いた、ジャーナリストの江川紹子さんは、伊藤さんについてこう感想を述べた。

「彼女は自分のためより、自分が訴えることで他の被害者のためにもなる、そしてそれが社会を変える、そういう思いが強くなっていると感じました」

 会見後、サバイバーだという女性から、どうすればあなたのように声をあげられますかと問われると、伊藤さんは静かにこう答えた。

「一番重要なのは、生き延びること。そうしないと前に進めません。それを優先してください」

(文/編集部・野村昌二)

AERAオンライン限定記事

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら