加齢で下がると考えがちなテストステロン値だが、実は個人差が大きいという(撮影/写真部・東川哲也)
加齢で下がると考えがちなテストステロン値だが、実は個人差が大きいという(撮影/写真部・東川哲也)
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テストステロン量は個人差が大きい(AERA 2019年12月9日号より)
テストステロン量は個人差が大きい(AERA 2019年12月9日号より)

 更年期障害といえば、中高年女性に特有のものと考えがちだが、男性にもある。30代で症状が出る人もいる。男性の場合、テストステロンという男性ホルモンの減少から起こる。AERA 2019年12月9日号から。

【グラフ】年齢とテストステロン量の関係は?

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 男性更年期で表れる精神症状や肉体的・性的な症状は、多くの場合、「年のせい」だと諦めがちだ。衰えを実感しながらも折り合いをつけて生活している人は多い。確かにテストステロン値は、統計的には年齢が上がるほど減少していく。だが、必ずしも年とともに減るものではないという。

 順天堂大学泌尿器科教授の堀江重郎医師は言う。

「テストステロン値は個人差が大きく、若くても低い人、高齢でも高い人もいる。個人レベルで見れば、必ずしも“年のせい”ではありません」

 実際、男性更年期障害と診断される患者も30代から80代までと幅広い。若くして診断される人もいる。

 東京都のアルバイトの男性(37)は、今年の梅雨時期に体がだるくなり、やる気が出ない、イライラするなどの精神症状も表れた。湿気や気圧の影響だろうと思い様子を見ていたが、複雑なことを考えられなくなり、活動量が少なくても強い疲労感を覚えるようになった。心療内科を受診し薬を処方されたが、症状は改善しなかった。そんなとき、男性更年期障害について知り、泌尿器科を受診した。

 獨協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授の井手久満医師によると、男性更年期障害は一般に、AMSスコアと呼ばれる問診と血液検査の結果を中心に、他の疾患とのスクリーニングを経て診断される。AMSスコアは、精神的・肉体的・性的な17の自覚症状を「極めて重い」から「ない」までの5段階で答える。27点以上で男性更年期障害の可能性があり、50点以上で「重度」の目安とされるが、前出の男性は67点。担当医は当初、「年齢的に更年期ではないのでは」と半信半疑だったが、血液検査でも基準値を下回り、診断がついた。

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