「過去最悪」とされる日韓関係。私たちの身の回りでも、変化は起きているのか。取材すると、「嫌韓」は家庭の中にまで入り込んでいた。
「全部、韓国が悪いんだよ」「こいつら何もわかっちゃいないな」
静岡県内の30代の男性公務員は、テレビを見ながらつぶやく70代の父親の言葉にうんざりさせられている。韓国に関するテレビニュースが流れるたび、父親が茶の間で「嫌韓」を露わにするのだ。男性はこう嘆く。
「父はもともと保守的な考えをもっていましたが、私や母はどちらかというと逆。なので、父は私たちの前では控えているつもりのようですが、口をついて出るんですよね」
父親の「嫌韓」は定年退職後、さまざまな市民活動に頻繁に顔をだすようになって顕著になった。そんな父親の言動を、同年代の母親は「そういうこと言ったらダメだよ」とやんわりたしなめていた。ところが最近は、母親にも異変が生じているという。
きっかけは、韓国大法院(最高裁)が日本企業に1人1億ウォン(約910万円)の支払いを命じた昨年10月の元徴用工訴訟判決だ。この訴訟をめぐる動きが盛んに報じられるようになると、母親も「ちょっとこれはねえ。(韓国とは)話が通じないんじゃないの」とこぼすようになった。
母親の変化が「ショックだった」と打ち明ける男性は、今の日本社会のムードについてこんな見方を示す。
「とくにネットでは、韓国を低く見るようなコメントが目につき憂慮しています。韓国を批判しておけば、とりあえずある程度の支持を得られると考えている人が多い。そして、少しでもそれを批判すれば、たちまち『反日』といったレッテルを貼られる傾向にあります」
男性は、日韓の政治的な駆け引きを「勝ち」「負け」や優劣で論じる風潮にも違和感を抱く。
「日本の国内では、かなりの人が日本のほうが優位だと考えているようですが、国や民族の関係において、どちらが優秀かなんて考えること自体、逆にレベルの低さを感じます」