身近な人が「嫌韓化」している、と指摘する意見はほかにも相次いだ。

「夏休みの旅行で一緒になった方が、最近韓国が嫌いになってきた、と言ったのでびっくり」(60代の女性公務員)、「職場などで韓国人を揶揄するような言動を耳にする」(40代の男性会社員)、「日本人の知人同士の雑談の中で、カジュアルな話題として『嫌韓』(見下す発言も含む)が飛び出すことがたびたびあり、閉口します」(30代の男性自営業)。

 国どうしの対立は、個人の暮らしや仕事にも影響を及ぼしつつある。

 10月に日本を訪れた韓国人旅行者数は、前年同月から65・5%減った。日本の10月の韓国向け輸出額も前年同月より23・1%減り、下落幅はそれぞれ9月の58・1%、15・9%からさらに大きくなった。

 北海道の札幌市時計台の前で、ポーズを取る観光客のカメラのシャッターを押すボランティア活動をしている同市内の男性会社員(50代)は、今年の夏は韓国からの観光客が例年より少ないと実感したという。

 そんななか、一人旅の韓国人女性がおずおずと男性に「シャッター押し」を依頼した。「喜んで!」と応じたという男性は、このときの心情をこう吐露する。

「女性は私に依頼していいものか逡巡していました。本来なら私の側から『押しましょうか?』と声をかければよかったのに、それができなかった。私の中に自分でも認めたくない『薄い膜』が張られていたのだと思います。それだけに彼女が勇気をもって依頼してくれたたときには、もやもやとした膜が取り払われたようで一層うれしく感じたのです」

 日韓ともに政治家は「票」のため、テレビは「視聴率」のために今回の騒動を利用している。その結果、市民の気持ちにも「薄い膜」ができてしまった、と男性は見る。

「メディアはこの薄い膜を取り払う方向に働くものだと思っていましたが、今回はそれが少数派になっているように感じます。この膜を取り払ってすっきりするには、長い時間をかけて相手国の印象が変わるような出来事をこつこつ積み上げていくしかないのでは」

「薄い膜」を感じている人はほかにもいる。
京都府のフリーランス業の女性(40代)は、韓国にまつわる二つの個人的なエピソードを明かしてくれた。

 一つは傘の話だ。韓国から来た人にお土産で傘をもらった。傘には目につく位置にハングル文字が書かれていた。しかし、その傘を堂々と広げて街なかを歩くことに女性は躊躇してしまった、という。

 女性は理由をこう話した。

「ヘイトスピーチで韓国をののしる人たちを取り上げたニュースの印象が強く、無意識のうちにそうした人々を連想し、自分もハングルの傘をさすと攻撃対象にされるのでは、という恐怖心がわいたのだと思います」

 もう一つは、近所の韓国料理店の話だ。何度か通ったことのある韓国料理店で先日、久しぶりに食事をした。その際、12月に店を閉じると聞かされた。韓国出身の女性店主が一人で切り盛りする小さな料理店。地元の日本人を中心に常連客でにぎわっていた。

 店主に閉店の理由を尋ねると、「日韓関係の悪化」が原因と知らされた。

「ニュースで日韓関係の軋轢が取り上げられると、常連客でさえも足が遠のきます。だから毎日、日韓関係のニュースが報道されないかチェックするのが習慣になりました」

 店主はこう打ち明け、近く韓国に帰国すると明かした。女性は言う。

「こんな身近なところで、日韓関係悪化のあおりを受けている人がいる実態を目の当たりにしてショックだったのと、私自身、社会のムードにのまれないようにしなければ、という思いを強くしました」

――週刊誌AERAは12月9日号(12月2日発売)で、韓国のビジネス紙「亜洲経済」と共同で200人の対面アンケートを実施しました。浮かび上がってきたのは、政府間の対立軸とは異なる、日韓それぞれの人々の思い。日韓関係をあらためて考えませんか。

(文/編集部・渡辺豪)

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