17時半。ロビーに移動し、サーバーで生ビールを注ぐ。宿泊客もいて、ワーキングスペースよりもざわついていた。イギリスから来たというカップルと軽く挨拶し、ビールでひと息。仕事の後の一杯は格別だ。1時間飲み放題だが、まだ仕事が残っているので2杯で我慢。誰もいないワーキングスペースに戻り、20時過ぎまでたっぷりと仕事をして家路についた。

 利用料1日3千円は、日常的に使うには少々高い。それでも、普段は2日ほどかかる原稿を、この日は1日でほぼ書き上げられた。混雑するカフェのカウンターで仕事をするよりはるかにはかどる。根を詰めて集中したい日なら、大いに利用価値ありと感じた。

 かつてコワーキングスペースは、主に自営業やフリーランスの人々が集まり、仕事場をシェアするものだった。だが、「働き方改革」の旗の下、職場に出勤することなく働く「テレワーク」が急拡大したことで、会社員の間にも需要が高まっている。検索サイト「コワーキング ジャパン」には、11月12日現在で全国991件のコワーキングスペースが掲載されている。サイトがスタートした2015年8月から4年で4倍に増えた。

 さらに従来はワーキングスペースではなかった施設がビジネス向けのプランを提供するようになっている。まさに「どこでも職場」になる時代なのだ。

 平日の午前11時、東京・両国にある「両国湯屋江戸遊」を訪れた。広い内湯に露天風呂、サウナや岩盤浴、食事処やリラクゼーションスペースまである温浴施設だ。朝からのんびりお風呂で日ごろの疲れをとって……というわけではない。館内に設けられた「湯work」というワーキングスペースで仕事をするのが目的だ。

 6月のリニューアルオープンに合わせて浴場を一新、その際、使わなくなる浴場をワーキングスペースにすることを思い付いたという。元浴場らしく、正面奥には富士山のタイル画があり、湯船がそのまま仕事スペースになっている。立ちシャワーがあった場所にはクッションが置かれ、半個室のブースとして使われていた。「サウナ」の看板が残った会議室もある。店長の小嶋錠一郎さんはこう話す。

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