ウェッジウッドで知られる陶器の町ストーク・オン・トレントでは陶器工場が閉鎖され、売りに出されていた(撮影/石合力)
ウェッジウッドで知られる陶器の町ストーク・オン・トレントでは陶器工場が閉鎖され、売りに出されていた(撮影/石合力)
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 EU離脱(ブレグジット)をめぐって、英国が亀裂を深めている。保守党では、合意なき離脱をも辞さないジョンソン首相に反意を示した保守党議員20人が党を除名された。最大野党の労働党も残留と離脱の間で揺れ、民意も割れている。亀裂の背景には何があるのか。AERA 2019年11月18日号に掲載された記事を紹介する。

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 主要政党の主張が過激化し、民意が分断する英国。その背景はどこにあるのか。カギを握るのが地方の衰退だ。

 英中部のストーク・オン・トレント。陶器産業で知られる町を今年7月に訪ねた。町を歩くと、廃炉になった陶器工場の煙突や工場跡が目立つ。英国を代表するこの町の陶器ブランド「ウェッジウッド」も、生き残りをかけて大幅なリストラ路線を進めていた。

 同社はごく一部の製品を除いて生産拠点をインドネシアなど海外に移転する方針を示し、約100人の解雇を通知したという。組合幹部のウェンディー・グリーブソンさんによると、最盛期に約7500人いた従業員は、50人前後になる見通しだ。

「海外の製造コストは、ここより4割安い。もはや競うことはできません」

 町での移動手段はタクシーが少なくなるなか、配車アプリのウーバーが便利だった。運転手の大半はパキスタンなどからの移民やその子孫が占める。

 町外れのパブでビールを飲む人たちの間では現状への不満が渦巻く。

「離脱なら経済が悪化するって? すでに悪いんだから、これ以上、悪くなっても何も変わらないよ」

 伝統的に労働党支持者の多かった地域だが、産業の衰退で労働組合の人数が減るなか、「離脱の実現」のみを主張する新党「離脱(ブレグジット)党」が急速に支持を伸ばしている。

 この町では、今年5月の欧州議会選で、離脱党が約2万票を得て第1党になった。9千票余りだった労働党の2倍。保守党は3400票余りにとどまった。トランプ米大統領を支持した「ラスト・ベルト」(さび付いた工業地帯)の英国版なのだ。

 英国では、経済的に繁栄を維持しているのは、ロンドン首都圏以外では、大学の町オックスフォード、ケンブリッジくらい、とも言われる。産業構造が変化するなか、グローバル化に対応できる若者、都市部の住民、富裕層らが「残留」を求め、高齢者、地方、貧困層が不満のはけ口として「離脱」を求める構図は3年前の国民投票以来、変わっていない。

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