小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 先日、英国の名門校ラグビー校が2022年に日本キャンパスをオープンさせると発表しました。富裕層には英国のボーディングスクール(全寮制学校)に子どもを留学させる人もいますが、いよいよ日本国内でも英国名門校の教育が受けられるようになるというのです。学費はかなり高いでしょうが、色めき立っている人は多そうです。

 この先を生き抜くには、もちろん英語は必須です。今や就活では大学名よりもTOEICのスコアが重視されるとも聞きますし、国内外を問わず働く上では欠かせません。その上で欧米社会でも一目置かれるような一流の教育と人脈を子どもに与える家庭もあると聞くと、とてもかなわないと焦る親もいるでしょう。

 外国に行けば、日本人は超マイノリティーです。アジア系の中でも少数派。つまり自分が社会の周縁部にいることを実感せざるを得ない経験をします。高い学費を払える家庭の子どもにとっては、そのことの方がむしろ大事な経験かもしれません。立場が変わらないと見えないものがあるからです。マジョリティーの立場とマイノリティーの立場を両方知るのはいい学びになるでしょう。

 最近は欧米ではなくマレーシアやフィリピンやインドに留学する学生もいます。中国やシンガポールに研修に行く高校も。インドネシアなど活気ある東南アジアを見るのもいい経験です。アフリカもこれから伸びていきます。世界は広いのです。

 留学させるお金はないけど我が子に「世界」を実感させたければ、近所のコンビニで働いている外国の人に話を聞くのがいいでしょう。どんな動機で日本に来て、日本で何を勉強しているのか。故国ではどんな生活なのか。とびきり優秀な人もいます。それを知るだけでも視野は広がり、複眼的な思考体験となるでしょう。

AERA 2019年11月11日号