松永美穂さんと鴻巣友季子さんが注目した作家たち(AERA 2019年10月21日号より)
松永美穂さんと鴻巣友季子さんが注目した作家たち(AERA 2019年10月21日号より)
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松永美穂(まつなが・みほ、右):1958年生まれ。ドイツ文学者、翻訳家、早稲田大学文学学術院文化構想学部教授。翻訳した『朗読者』が第54回毎日出版文化賞特別賞受賞/鴻巣友季子(こうのす・ゆきこ):1963年生まれ。翻訳家、エッセイスト。著書に『全身翻訳家』『翻訳ってなんだろう?』『謎とき「風と共に去りぬ」』など(撮影/門間新弥)
松永美穂(まつなが・みほ、右):1958年生まれ。ドイツ文学者、翻訳家、早稲田大学文学学術院文化構想学部教授。翻訳した『朗読者』が第54回毎日出版文化賞特別賞受賞/鴻巣友季子(こうのす・ゆきこ):1963年生まれ。翻訳家、エッセイスト。著書に『全身翻訳家』『翻訳ってなんだろう?』『謎とき「風と共に去りぬ」』など(撮影/門間新弥)

 今年もノーベル賞が発表された。受賞者の発表を機に、ドイツ文学者の松永美穂さんと翻訳家の鴻巣友季子さんが、ノーベル文学賞について語り合った。AERA 2019年10月21日号に掲載された記事を紹介する。

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*  *  *

鴻巣:スウェーデン・アカデミーって、とにかく誰も思っていなかったところにボールを投げるのが得意な人たちなんですよ(笑)。毎年、絶対に来ると思ったという人はほとんどなくて。その傾向にさらに輪をかけたのがサラ・ダニウスの事務局長時代で、ジャーナリストには絶対いかないよって言っていたら『チェルノブイリの祈り』のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチが受賞した。ボブ・ディランはネタとして挙がっているだけって言っていたら受賞して。そしてカズオ・イシグロと続きました。

松永:そんなアグレッシブな時を経て、今年からは選考委員も半数くらい代わったんですよね。将来的に私が取ってほしいなと思うのは、ロシアのリュドミラ・ウリツカヤですね。彼女の『通訳ダニエル・シュタイン』は毎年学生に薦めています。アレクシエーヴィッチが受賞したときに、ロシア圏の女性ということでかぶるかなと思いましたがいつかは取ってほしい。ドイツ語圏では、ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガーがいますが、もう89歳で最近はあまり活動していません。

鴻巣:私はブッカー賞を2作連続取っているイギリスのヒラリー・マンテルですね。

松永:ブッカー賞2作連続! そんな人いるんですね。

鴻巣:普通そんなのありえないじゃないですか。有無を言わせなかったんでしょう。ノーベル賞も取ってしかるべきです。

松永:あとは、マーガレット・アトウッド。同じカナダのアリス・マンローが取った時に、これでアトウッドはどうなるんだって思いましたが。

鴻巣:ここのところ英語圏が続いて不利ですが、アトウッドは評価されるべき作家だと思います。彼女の小説デビューは1969年の『食べられる女』ですが、その時すでに女性の摂食障害を取り上げているんです。

松永:50年も前に。

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