企画展「表現の不自由展・その後」に展示された「平和の少女像」(右)。再開後も展示は維持される見通しだが、事前予約が必要になる (c)朝日新聞社
企画展「表現の不自由展・その後」に展示された「平和の少女像」(右)。再開後も展示は維持される見通しだが、事前予約が必要になる (c)朝日新聞社
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「企画展「表現の不自由展・その後」で慰安婦を表現した少女像などの作品展示が物議をかもした「あいちトリエンナーレ」。このほど文化庁が、その「あいちトリエンナーレ」への補助金の不交付を決定した。今回の決定は、安倍首相と萩生田光一文部科学大臣の「安倍─萩生田」ラインが主導したとの声もある。文化庁を傘下に置く文科省の事務次官経験者は、文化庁は官邸からの支配を受けやすい役所だと話す。AERA 2019年10月14日号に掲載された記事を紹介する。

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 文化庁を傘下に置く文科省の事務次官を務めた前川喜平氏は、文化庁は官邸支配の影響が極めて強烈な役所だと話す。

 その一例として前川氏が挙げるのが、安倍首相の出身地である山口県の萩反射炉を含む「明治日本の産業革命遺産(産業遺産)」の世界遺産登録(2015年7月)。文化庁が人選した文化審議会の委員リストに官邸が注文をつけ、産業遺産の推進に消極的だった人物を外した経緯があるという。

「文化庁は文科省の外局という小さな役所なので、上の決定に唯々諾々と従わざるを得ない。文化庁長官は日本を代表する芸術家であり決して役人ではないが、今回は表現の自由が問われる案件。芸術家の良心はどこに行ったかと言いたい」

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