前川氏は、文化庁の補助金不交付の決定のプロセスは、安倍政権と韓国との間で国際問題化している「徴用工問題」に端を発する、韓国への輸出規制と構図が酷似していると分析する。
「問題の本質は、輸出規制では歴史認識の問題であり、今回の不交付では表現の自由の問題なのですが、どちらも全く関係のない、実務的な手続きが問題だとしています。あからさまに政府が介入すれば裁判となり、負ける可能性もある。だから、全く別の理屈をたて本質から目をそらそうとするのです」
この補助金の採択の審査には、美術関係者などの有識者6人でつくる審査委員会があたった。だが文化庁は不交付を決めるにあたって審査委員会に意見を求めなかったという。
審査委員を務めた野田邦弘・鳥取大学特命教授は「説明になってない」と文化庁に辞意を伝えた。野田氏を含む複数の関係者が抗議の署名活動を開始するなど、文化庁のお膝元から、今回の決定プロセスに異論があがっている。
そんな中、6日からは「表現の不自由展・その後」が再び、開催される(4日現在の予定)。政治家の意にそぐわない展示は芸術ではないと排除することが絶対に許されないことは、ここで言うまでもない。(編集部・中原一歩)
※AERA 2019年10月14日号より抜粋