16歳の環境活動家・グレタ・トゥンベリさんの活動が注目されている。昨年8月に1人ストックホルムの議会前に座り込む「気候のための学校ストライキ」を行い、その活動などがSNSで拡散。大きな注目を浴び、9月に米国で開かれた国連気候行動サミットでは演説も行った。しかし周囲からはそんな彼女を攻撃する声もあがっている。東大名誉教授の上野千鶴子さんは、そうした中傷を痛烈に批判する。AERA 2019年10月14日号に掲載された記事を紹介する。
【写真】「若者たちはあなたたちの裏切り行為に気づき始めている」と力強くスピーチしたグレタ・トゥンベリさん
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トゥンベリさんをめぐっては、「大人に操られている」と勘ぐる発言もやまない。
「この運動の裏に誰がいるのかを知っている。治安当局から報告があった」と発言したベルギーに4人いる環境大臣の1人は、辞任。すぐに治安当局も否定している。
これに対し、上野さんは「16歳といえば前近代では元服している年齢。判断力のあるりっぱな大人です」と話す。
「『大人が利用した』といえば、彼女を招いた国連が彼女を『利用した』のです。国連は核兵器禁止条約の協議の場に被爆者のサーロー節子さんを招くなど、当事者を上手に利用しています。国連外交の戦略の勝利というべきでしょう。文句を言うなら国連へ」
トゥンベリさんはアスペルガー症候群、強迫性障害、場面緘黙(かんもく)症の診断を受けているとも公表している。これが、彼女をあげつらう人を勢いづかせる。
「精神的に病んでいる」
米国のコメンテーターはテレビで何度も言い放った(後にテレビ局が謝罪)。高須克弥医師は「対人恐怖症と妄想が同居している」とツイートした。
トゥンベリさんは、必要だと思うときしか話さない、という。嘘をつくのは上手でない。白か黒か。だから、生存を脅かす気候変動に対して何もしない大人たちに納得できず、うつ状態になった。人付き合いがあまり得意ではなかったから、既存の団体に入るのではなく、1人でストライキを始めた。
「『何もしない』ことが、どんな行動よりメッセージをよく伝えることがある。ささやきが叫び声より、響きわたるように」
「アスペルガー症候群は病気ではありません。才能です」
フェイスブックにそう書く。
それでも、トゥンベリさんのメッセージを受け止めず、論点をずらす人たち。上野さんは指摘する。