「けいおん!」の舞台のモデルとなった校舎内の黒板(滋賀県豊郷町) (c)朝日新聞社
「けいおん!」の舞台のモデルとなった校舎内の黒板(滋賀県豊郷町) (c)朝日新聞社
「らき☆すた」ゆかりの鷲宮神社に納められた絵馬(埼玉県久喜市) (c)朝日新聞社
「らき☆すた」ゆかりの鷲宮神社に納められた絵馬(埼玉県久喜市) (c)朝日新聞社

「京都アニメーション」放火事件では、世界を魅了してきた作品に携わる35人ものスタッフが命を落とした。衝撃と悲しみは、国内外のファンや作品ゆかりの土地の人たちに広がっている。

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 埼玉県久喜市の鷲宮(わしのみや)神社は、京都アニメーションのテレビアニメ「らき☆すた」の舞台のモデルとされ、今もファンが通い続ける「聖地」の一つだ。同作の監督の武本康弘さん(47)は、いまだに安否が分かっていない。事件以来、神社には関係者の無事や京アニ復活を祈る絵馬が次々と納められている。

 武本さんは、水泳に打ち込む少年たちを描いて人気の「Free!」シリーズの1本、「映画 ハイ☆スピード!‐Free! Starting Days‐」も監督した。公開時のあるインタビューでは「登場するキャラクターは全員ピュアでかわいらしい」と、主人公らへの思いを語っていた。

 京都府宇治市に本社を置く京アニは1981年に創業。八田英明社長の妻陽子さんが、東京のアニメ会社で働いた経験を生かし、セルに色を塗る「仕上げ」の下請けを始めたのが出発点という。

 徐々に人を増やし、アニメーターを雇って原画(動きのキーとなる絵)や動画(原画と原画の間をつなぐ絵)も担当するようになる。正確で丁寧な仕事ぶりは業界で評判を取った。やがて下請けから脱し、新しい世紀に入る頃から念願の自社作品を手がけるようになる。ここからは独立独歩だ。

 東京一極集中の業界にあって、京都からの発信にこだわった。極端な分業化と人材の流動、非正規雇用が進む流れに背を向け、社内で制作を完結させる態勢を作った。正規雇用を維持し、人材育成、福利厚生に力を入れた。「働き方改革」の先取りだ。外からは閉鎖的とも見えるが、一つの家族のような会社が出来上がった。

 2000年代半ばから、京アニはヒット作を続々と送り出していく。生え抜きスタッフの才能が花開き、手厚い職人集団がそれを支えた。

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