



低所得世帯の子どもを対象に高等教育の負担を軽減する関連法が可決・成立した。しかし条件付きの無償化だ。教育支出が主要国最下位の日本。学生が声を上げ始めた。
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朝、8時半に家を出て、9時半に出社。17時半まで働き、18時15分から授業。授業が終わるのは21時25分だ。
東洋大学国際学部第2部2年生の嶋田侑飛(ゆうひ)さん(20)は、この4月から正社員として働き始めた。月12万円の有利子奨学金を1年間借りていた。これだけあれば学費も払え、生活もできる。しかし4年借りた場合、元金だけで576万円。とても返せないと思い、借りるのをやめた。
「そんなに借金を背負っても、給料のいい会社に就職できるかわからない。いま働くしかないという感覚です」
夜間部を選んだのは昼間部(第1部)と比べて授業料が年額53万5千円と比較的安いからだ。
「この選択は良かったと思っています」
バイトをかけもちするより、1カ所で正社員として働けば給料が奨学金以上になり、賞与や家賃補助も出る。睡眠時間は約6時間。毎日心身ともに疲弊している。職場の理解があるからこそ学業と仕事の両立ができていると思う。働きながら学ぶということの大変さを、身をもって感じる日々だ。
東京大学文学部3年生の岩崎詩都香(しずか)さん(20)は、8歳のとき父親が他界し、6人きょうだいの末っ子として母子家庭で育った。
「家が大変だったので勉強しなきゃという思いが強かった。貧困の連鎖を抜け出したいし、母を楽にさせてあげたいと思って」
東大では2008年度から給与収入400万円以下の世帯の学生は授業料全額免除になる制度が導入されており、岩崎さんも年額53万5800円の学費が免除されている。仕送りはなし。生活費は無利子の奨学金とバイトでまかなっている。
しかし周りを見ると、貧困世帯ではない家庭の友人が学費のために大学進学を諦めたり、大学に入ってもバイト漬けの学生がいたりする現実があった。