ただ、最初から楽だったわけではありません。親子で1年におよぶトレーニングを乗り越えて、やっとこの状態に到達することができたのです。トレーニングの名称は、cry it out(泣かせっぱなし)。泣いていたのは娘だけではありません。母である私も涙なみだの1年間でした。
娘が一人寝トレーニングを始めたのは、生後12カ月の時。それでも遅すぎるとアメリカ人の夫の家族には言われました。月齢が上がるにつれて親と寝る習慣がついてしまい、一人寝が難しくなるというのです。多くの家庭は生後6カ月くらいから赤ちゃんを一人部屋で寝かせるようです。
ちなみに、米国小児科学会はSIDS(乳幼児突然死症候群)を避けるために生後12カ月までは同室で寝ましょうと注意喚起しています。注意喚起をしなければいけないくらい同室で寝ている家庭が少ないという表れであり、「12カ月は長すぎる。4カ月から別室で寝かせてもいい」などと唱える専門家もいて見解が分かれています。
さて、12カ月の子がいきなり一人で寝てくれるわけがありません。ベビーベッドを離れたとたん、ギャン泣き。いや、ギャンなんて可愛いものじゃなく、グワングワンと脳髄に響くように叫びます。でも、ここで抱っこしてはいけません。抱っこすると「泣けば抱いてもらえる」と子に覚えさせてしまうからです。だから、放置。トレーニング初期は手を握ったり声をかけたりして安心感を与えたほうがいいのですが、数日したら放置。cry it out(泣かせっぱなし)といわれるゆえんです。この放置を経て、一人で寝つけるよう教え込ませます。
「赤ちゃんは、スロットマシーンを試しているようなものだ」と、ある小児科医の説明にありました。「100回中1回でも大当たりが出たら、トータルでは損するとわかっていてもスロットにお金をつぎ込みたくなるのが人間。赤ん坊も同じで、100回中1回でも抱っこしてもらえたら、その1回に望みを託して大泣きを続けるのだ」と。