試しに正しいフォームで歩いてみた。両脚・両腕が「四輪」となり、体全体で歩いている感覚がする。歩幅も大きくなり、いつもより速く歩ける。

 とはいえ、ひじを直角に曲げた「ザ・ウォーキング」といった歩き方は、街中ではなかなかできない。そんなときは、ひじを曲げないまま後ろに引けばいいという。

 両腕を使って歩くのであれば、荷物は持たないか、リュックスタイルにしたいところだ。だが、会社員であれば、カバンなどを手に歩く人は多いだろう。その時はカバンを持っていないほうの腕を、ひじを曲げないまま後ろに大きく引くといい。すると、腕を引いたほうの骨盤が前に押し出される。水泳でいえば「片手クロール」の状態。これを信号や電信柱ごとに左右の持ち手を変えて行うのがコツだという。

 運動の強度を高めたいなら、坂道や階段を歩くのがおすすめだ。平地を歩くのとは違う筋肉を鍛えることができるだけじゃなく、エスカレーターやエレベーターに長い列ができているときでも、階段なら待たずにすむことが多く、一石二鳥だ。

「階段を上る時は、なるべくかかとが高い位置をキープするのがポイントです。かかとが下がった状態だと、ふくらはぎが疲れてきて結果として太くなります。下る時は、余計なことを考えながら歩くと転倒の危険性があるので考えないほうがよいでしょう。強いて言えば、つま先と膝が前に向いているかどうか、たまにチェックするくらいで大丈夫です」(青山さん)

 女性の悩みで多かったのは、ハイヒールを履いた時にうまく歩けないというものだ。ハイヒールを履いて歩くと足を痛めたり、転んだりする危険性が高いなどという指摘もある。スニーカーや、最近流行の機能性パンプスを履ければいいのだろうが、それでもハイヒールを履きたいときもある。履きこなすにはどうすればよいか。

『ハイヒール・マジック』(講談社)などの著書がある、一般社団法人日本ハイヒール協会理事長のマダム由美子さんは、そもそもハイヒールで足が痛くなったりするのは、選び方を間違えているからだという。

「自分の足に合う靴と正しい姿勢と歩き方を身につければ、ハイヒールでも美しく快適に歩けます」

 そんなマダム由美子さんに、ハイヒールで歩く時と買う時のコツを教えてもらった。

 こうした「歩きのプロ」たちに共通した意見は、「無理は禁物」というものだ。腰や膝が痛かったり体調が悪かったりと、体がSOSを出している時は、無理に歩いてはいけないという。

 そもそも1日8千歩を歩くとなると、健康な40代でも1時間はかかる。一気に歩こうとは思わず、生活のなかでこまめに歩き、歩数を増やしていくのがよいだろう。普段歩く習慣がない人にとっては、最初から「8千歩、そのうち早歩きを20分」は難しいかもしれない。そのときは「4千歩でそのうち5分を早歩き」「7千歩でそのうち15分を早歩き」などと、少しずつ増やしていけばいい。

 無理をせず、正しい歩き方で日々の暮らしにウォーキングを取り入れたい。今は、風薫る季節でもある。(編集部・野村昌二)

AERA 2019年5月27日号

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら